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「ふ、う……っ」  避ける暇も余力すら残っていなかった。  されるがまま、精液で汚れた唇を舐られ驚く。  やめろ、と顔を逸らそうとしたところを帽子屋はのしかかってきた。 「ん、ぅ……っ!」  覆いかぶさってくる影。自分の出したものを口移しするようなものだ、それを嫌がるどころか興奮した様子で行うこの男の精神状態は一生もっても理解することはできないだろう。  口づけに気を取られている間に、足を大きく開脚させられる。 「っ、ぅ、んむ……っ!」  ず、と挿入される指に堪らず背筋が震えた。  舌を絡められた状態のままでは待ってくれ、と止めることもできない。体をベッドに押し倒され、そのまま更に体内にねじ込まれる指の本数が増やされる。 「っ、うむ……っ! ん、うぅッ!」  帽子屋の指は容赦なかった。的確に弱いところばかりを執拗に責め立てられる。  ベッドの上、シーツを引っ掻くように逃げようとするが、やつに押し倒されれば簡単に逃れることなどできない。 「っ、ふ、んむ……ッ! う……ッ! んん……ッ!」  おかしくなる。だめだ。これ以上は。  頭を振って必死に抗議するが、より一層とろけたように微笑んだ帽子屋は僕から舌を引き抜き、そして「可愛いね」と囁くのだ。   「っ、は、……っ、き、さま……っ、ぁ゛……?!」 「君にたっぷりと気持ちよくしてもらったお礼さ。何か問題でもあるかい?」 「ぁ、あ……っ、ん、ちが、……っ、いやだ、こんな……ッ!」  こんなこと、僕は望んでいない。  そう言いたいのに、前立腺をすりすりと撫でられる度に思考がかき乱され、喉奥からは出したくもない声が漏れてしまう。 「っ、ぃ、やだ、帽子屋……ッ、も、ぉ……ッ! ひっ、う゛」  更に中を掻き回され、堪らず上体が大きく逸れる。帽子屋は再び僕の唇に吸い付き、「クイーン」と小さく囁くのだ。 「ぁ、……っ、あ、や、めッ、も、だめだ、帽子屋……ッ! ん゛、ぐ……ッ!」  堪らず帽子屋にすがりついたときだった、帽子屋は小さく息を飲む。そして、すっと双眸を細めた帽子屋は僕の体を抱き締める。そして、帽子屋の愛撫は更に激しさを増すのだ。 「は、ぁ……っ、あ、ぁ……っ、いやだ、だめだ、も……っ、抜け、……っ抜け、ぬ……ッ! ぅ゛、――~~ッ!」  ぴんと勃起した性器から滴る体液を拭い、それを更に粘膜へと塗り込むように中を掻き回されたときだった。硬く凝ったそこを指の腹でほんの少し押された瞬間、限界まで張り詰めていた糸は呆気なく途切れるのだ。  大きく浮き上がった腰、そして天井を向いていた性器からは勢いよく白濁が吹き出す。真っ白に染まる視界の中、僕は落ちてくる精液を自ら下半身で受け止めるのだ。 「っ、は……ぁ……っ」  何も考えることもできない。ただ恐ろしいほどの疲弊感に堪えられず、ベッドの上で脱力したときだった。  寝室の扉がノックされたのだ。そして、すぐに扉が開き、凍りつく。 「クイーン、キングがお呼びで……って、うわ。なにやってんすか」  ――そこに立っていたのは赤い隊服の男、サイスだった。  サイスは、ほぼ裸に等しい状態で動けなくなっていた僕と、その横に座る帽子屋を見てぎょっとする。  対する帽子屋はいつもと変わらないあっけらかんとした態度で応対するのだ。 「見ての通り、クイーンへのご奉仕さ。君も混ざるかい?」 「……混ざりません。ってか、キングから呼び出しだって言ってんでしょーが」  呆れたようなサイスに、「王からなら仕方ないね」と肩を竦める帽子屋。僕の中から指を引き抜いた帽子屋はそのまま何事もなかったように自分だけ服を整えるのだ。  そして、動けないまま見てることしかできない僕を振り返り、微笑んだ。 「それでは私はこれで失礼するよ。寂しくなったらまた呼んでくれ、クイーン」  お前が勝手にしたことじゃないか。誰も寂しいなどと一言も言っていない。  言い返してやりたかったが、睨むことすらもできなかった。さっさと出ていく帽子屋と入れ違うように、「なんだあの人」と呆れた顔して帽子屋を見送ったサイスはそのままベッドに近付いてきた。 「クイーン、大丈夫ですか」 「く、るな……」 「来るなって……あんた、相当具合悪そうだけど?」  間違いないだろう。気分も体も何もかも最悪だった。まだ違和感と火照りが抜けないまま、恥ずかしがる気力もサイスを追い出す体力もなかった。  のそりとなんとか上半身だけ起こした。  ベッドの側で立ち止まったサイスの目が痛い。 「……平気だ。……準備して、僕もすぐに向かう。外で待機してろ」 「でも」 「いいから、出ていってくれ」 「……りょーかい」  ぽりぽりと髪を掻き上げ、サイスはそのまま寝室の外へと出ていった。

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