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「どうしても今日言いたかったんだよな」
「なんで」
雅樹が目の前のカレンダーを指差した。
「11月22日、いい夫婦の日だろ」
「わあ」
「おい、引くなよ」
二人で顔を見合わせて笑った。
今まで怖くて聞け無かった二人の関係が、今日から『いい夫婦』になるなんて信じられない。一度にやってきた過剰な幸福をどうしていいのか、持て余す。
もう終わりにしなくてもいい、この安堵だけで今日の自分は、おなかがいっぱいなのだ。
うれしさはこの後、じわじわとこみあげてくるに違いない。
マスターが無言でグラスを置き、シャンパンを注いだ。
グラスに手を伸ばすと少し無骨な薬指の指輪は、二人の幸せな未来の証を示すかのように光り輝いていた。
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