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あふれる幸せ。

「それなら俺のほうがバカみたいじゃん。俺はおまえも同じ気持ちだと思ってたんだぜ」 「同じっていうか……」 「おまえは俺じゃダメなの?」  急に甘さと優しさを含んだ声で囁かれて、胸が締め付けられる。  そうじゃない。そうじゃないのに、気持ちがまだ追いついてこない。 「俺らって恋人だったってこと?」 「そこ?」 「それで、これは、その……そういう意味?」  左手を持ち上げる。 「うん。男同士だから結婚は無理でも、一応その証っつーか」 「やっぱり無理だよ……」  はぁ、とため息をついて両手で顔を覆った。 「無理って……」  落胆した声が返ってきて、目の前のビールを手に取った音がした。おそらく一気に飲み干したのだろう。 肩で、はぁと息をして、雅樹の顔を見た。 「……幸せすぎて無理」  それだけ告げると、ぷいっと視線を逸らせて、自分も目の前のビールを飲み干した。 「んだよ、びっくりさせんなよ!」  雅樹の声が途端に明るくなる。それはこっちの台詞だ。今日まで生きた心地がしなかったのだから。

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