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すれ違い。
「おまえが寝てる間に測ったから自信なかったんだけど、ぴったりでよかった」
「へ……奥さんって、指でかいの?」
「は?奥さん? 一応、そういうことになるのかな」
「俺と同じ指のサイズって相当だぞ」
雅樹はきょとんとした顔をして、すぐに吹き出した。
「そういうこと? おまえ、相手を誰だと思ってた?」
「は?」
頭が混乱する。もしかして、これは自分のための指輪、なのか?
「なんで俺がおまえ以外に指輪渡すんだよ」
「だ、だっておまえが見合いなんてするから、そいつと結婚すると思うだろうが!」
「は?そんなの断ったに決まってんだろ、バーカ」
「断ったって……」
今まで自分の心を支配していた不安の靄が徐々に薄くなっていくのを感じ、薬指の指輪を見ながら、さきほどとは別の種類の涙がこみあげる。
「うわ、おまえマジかよ」
雅樹の笑いを含んだ言葉に、何も言い返せない。すぐに気持ちを切り替えて喜べるほど、神経が図太ければよかったのに。
「あのなぁ、そもそも達也は、俺以外の相手と結婚できるのか?」
「……」
「俺はおまえしか考えられない。だからこうやって指輪を……」
「だって今までそんな話、一度も!」
思わず声を荒げてしまう。店内は自分たちしか客はいなかったが、マスターの耳には届いているだろう。
この店に来たときから、終わりにすると覚悟を決めた。指輪を見て決定的だとわかった。そこから逆の結末になるだなんて思うわけがない。
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