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第20話
「眉間に皺が寄ってる」
いつの間にか通話を終えたらしい徹が日下の横に立っていた。
「終わったのか」
「うん。向こうはこれから仕事だから。何か悩み事? 仕事のこと?」
徹は冷蔵庫を開けると、取り出した緑茶をグラスに注いだ。立ったままグラスを口に運ぶ。
「そんなところだ」
適当に答えると、ガラスのピッチャーを冷蔵庫に戻した徹がじっと日下を見た。
「何だ?」
何となく居心地の悪さを感じながら、次に何を言われるかわずかに警戒する。徹が持っていたグラスを台の上に置いた。
「きて」
徹は眉を顰める日下を促し、リビングのソファに移動した。徹の手が日下の肩に触れ、思わずびくっとした。無意識のうちに身体に力が入り、逃げようとする。
「なんだ、何をしている」
「痛かったら言って」
徹は日下の背後に回り込むと、ゆっくりと肩のあたりに圧をかけていった。
「目を閉じて。何も考えないで」
徹の指が、日下の生え際からつむじに向かって、円を描くようにマッサージしていく。トップのあたりを手のひらで挟み込むようにぐうっと引き上げられて、日下はあまりの気持ちよさに、おかしな声が出そうになった。
「……お前、こんなことどこで覚えたの?」
「頭皮が硬くなってる。これじゃあつらいでしょう。そうだ、ちょっと待ってて」
徹はそう言うと、どこかへ消えた。何をしているのだろうと日下が不審に思ったとき、徹が戻ってきた。手にしたタオルをキッチンで濡らして、レンジで温める。
「どう、熱くない?」
目の上にほどよく温められた蒸しタオルを乗せられて、全身の力が抜ける。同時に、ここ最近何となく苛立っていた気持ちもほぐれる気がした。
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