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チ〇ポの2 ビッチの始動

    チ〇ポの2 ビッチの始動  生ガキに、カキフライに、土手鍋……等々。カキ料理が一丸の〝お勧め〟のボードを席巻するのもなるほど納得、十月だ。  涼太郎がスタッフの一員となって半月余り。羽月は涼太郎と同じ曜日、同じ時間帯にシフトに入るよう裏工作に励み、さらにつれ立って家路につくようこれ務め、フェロモンを垂れ流した。  だが、ご子息を拝見という展開になるどころか、玉砕に次ぐ玉砕つづきだ。学園祭に関するものをはじめとして共通の話題には事欠かないのに、どんなに話が弾んでいても、分かれ道に差しかかると涼太郎は躊躇(ちゅうちょ)なく自転車で走り去る。フェロモンの濃度を高めても毎回、そうなる。  ウルウルした目を向けても、 「では、またバイトの日に」  いなされっぱなしで、などという昭和の香りが漂うフレーズを呟きながらへたり込む羽目になる。対・涼太郎プロジェクトに根本的な誤りがあるのだろうか。記憶をたぐり、ひとり反省会を開いても思い当たる節はない。  欲求不満がつのるのに比例して玩具の出番が増える。電池の買い置きがなくなるわ、右手が腱鞘炎になるようだわ、とビッチ道を究めはじめて以来、最大の危機に陥っていた。  ただし激励の品のコンドームが埃をかぶっているかといえば、そんなことはない。むらむらするたびに試食のウインナーをいただくノリで、何本かペニスをつまみ食いした。  しかし、あくまで本命は涼太郎! ……のペニスなのだ。  野望を果たすためとあらば、(はかりごと)のひとつもめぐらす。ある夜、バイトの帰り道に、こちらの方向に用事があると偽って涼太郎にくっついていき、アパートの場所を突き止めた。それで第一段階は完了。  第二段階は、にわか雨に降られる確率が高い日を待つのみ。もっとも、こういうときに限って高気圧が張り出す。じりじりと天気図を睨んですごすこと数日、一部地域に雨マークが出た!  ワインボトルを入れたリュックサックを背負って、いざ、出陣!   宵闇が迫るにつれて、予報通り黒雲が広がりはじめた。目的地付近の住宅街を行ったり来たりしているうちに、ぽつぽつと雨が落ちてきた。  羽月はガッツポーズをした。これも作戦の一部、と街角にたたずむ。髪の毛がある程度濡れて、艶めくのを待ってから、とある路地を突き進んだ。そして古めかしいアパートの外階段をのぼる。  よく言えばレトロ感が漂うこのアパートを、今宵はエロの嵐が吹き荒れるのだ! 窓明かりで在宅の有無は確認ずみで、勇んで突き当たりの部屋のチャイムを鳴らした。  題して〝ほだされてちょうだい作戦〟。  羽月に話しかけるさいに、未だに〝四ノ宮先輩〟で通す律義キャラなら、濡れ鼠で頼ってきたその先輩に門前払いを食わせることはするまい。

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