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第68話

「おっきいねえ。銜えたら口からはみ出すかも」  上体がかしいだ、と思ったときには仰向けに組み伏せられたあとだ。憮然とした顔が大写しで迫り、唇を嚙み裂く勢いでくちづけられると、胸がきゅんきゅんする。ついでに蜜をはらむ。 「過去に嫉妬するのは愚の骨頂だが、従兄をはじめとする遍歴の一端を匂わされると面白くない。犬のしつけは最初が肝心で、同様に釘を刺しておく。浮気は許さない」  羽月は、あえて謎めいた笑みを浮かべた。両足をくの字に立てると腰を浮かせて、花芯をちらつかせてみせる。 「男前なその子をここで可愛がらせてくれたら、一棒主義を貫くけど?」  襞をひとひらめくり、人差し指をゆるゆると沈める。そして、やわやわとかき混ぜて手本を示すと同時に煽った。  ぐぐぐ、と如意棒のようにペニスがいちだんとそそり立つさまは拍手喝采もの。羽月は、わざともったいぶって双丘を割り広げた。おずおずと指が伸びてくると、後から後から蜜がにじむ。  思えば、自分史上最長の長きにわたる禁欲生活によくぞ耐え抜いた。飢えています、いわばペニス飢饉にみまわれて気息奄々というほどに。  ほぐしてからなんて、まどろっこしいことは言っていられない。一刻も早く涼太郎の存在を深奥で感じて、恋が実った喜びを分かち合いたい。 「見て確かめても信じがたい。こんな、ちっぽけな穴に挿入(はい)るものなのか」  くにゅくにゅと浅い位置をくじられて、羽月は涙ぐむ思いでうなずいた。前戯をおざなりにすませたばかりに裂けたら裂けようとも本望だ。  収納ボックスからローションを摑み出し、ぐるりと内側にたっぷり塗り込める。本当はこれ見よがしに指を出し入れして、涼太郎を焦らすとともに手ほどきをしたいところだが、大急ぎでコンドームの封を切った。 「ゴムをつけたことは……愚問でした。ちなみに、つけ方はわかる?」 「知識はある。あとは実践あるのみだ」 「ぶっつけ本番じゃ心配だな。空気を抜きながらつけないと、中で破れることがあるんだよ?」  と、大げさに顔をしかめてみせた。精液だまりを唇の上下で挟み、フェラチオとの合わせ技でかぶせていったのは、愛おしく思う気持ちを伝えたかったから。 「かっ、過剰なサービスは慎んで……!」  パニクるさまが可愛らしくて、装着するのにかこつけて吸いしだく。童貞くんには刺激が強すぎたようで、涼太郎が硬直した隙をついて、彼を引き倒すなり跨った。  ギャザーを解き伸ばし、その一方で猛りを垂直に立てておいて、しずしずと腰を沈めていく。

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