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第76話

「意地悪しないで奥まできてよ……っ、あ」  ほっそりしていても、やはり男。力が強い。抱き寄せられると、うっかりムスコが埋没しかねない。  ただでさえ羽月の中は熱くて複雑に蠢く粘膜が吸いついてきて、喩えようもなく素晴らしいのだ。体力の限界に挑戦する形で突いて突いて突きまくりたい、という誘惑に抗って退くのは、我ながらやせ我慢の最たるものだ、と思う。  ちなみに本日の挿入率は約六十パーセント。  いつまで自制心を保っていられるかは神のみぞ知る。運を天に任せつつも、当面はこのスタンスを維持していくつもりだ。  ところで羽月を射止めるにあたっては一計を案じた。白石涼太郎という存在に興味を持ってもらわないことには話が始まらない。自慢のフェロモンが効かないとなるとムキになる、と睨んだとおり単なるペニス以上として印象づけることに成功した。  両思いをめざして羽月の(ふところ)に入り込むとともに、改心するよう働きかけた。いろいろ貸しがあった従兄にストーカーの役を振って、揺さぶりをかけたのも戦略のひとつだ。〝従兄がハメ逃げされた〟というのは作り話だ。当然だ。惚れた相手をみすみす他の男に抱かせるお人好しが、どこの世界にいる?   もっとも羽月のほうは、ストーカー候補に心当たりがありすぎるくらいあったようで、従兄犯人説をあっさりと信じた。  単純な子でよかったとホッとする反面、嫉妬の炎がめらめらと燃えあがった涼太郎であった。と同時に、いわゆるお清めセックスに励もう、と決意を新たにしたものだ。  ともあれ策を弄した甲斐あって、ラブラブな上にもラブラブな現在に至る。笑顔はもとより泣き顔もふくれっ面も寝顔も、全部全部可愛い。  完全合体を目論んでジタバタするのが可愛い……等々、いやはやキリがない。恋は盲目とは、このことである。  ビッチを上手に躾けるには愛情ならびに時には謀略を巡らす、ずるがしこさが必要だ。  とはいえ褒められたやり方ではないことは確かで、涼太郎はちょっぴり罪悪感に苛まれる。恋する男は猪突猛進で、それがエクスキューズではあるものの、あれこれと画策したことは永遠の秘密だ。  と、前進および後退の律動を刻んだ拍子に勢いあまって、ズボッ!     ──了──

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