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第一話 悪夢
“真っ暗な闇、いつもそうだ……”
そう思うと…突如、その暗闇の中心に仄かに記憶の光が灯る……
“嫌になるくらい……少なくとも夢だって解るくらいには見慣れた……ほら、ね……
明るくなる……”
ブラウン管のテレビがぼんやり映像を映し出すように暗闇に間接照明のオレンジ色が滲んでいく。
“うぅ……聞きたくない……でも……耳を塞いでも聞こえてくる……”
ボリュームのつまみを回して、徐々に音量を上げるように、罵倒と苦痛の声が大きく響いてくる。
“やだな……早く……こんなの醒めてくれたらいいのに……せめて夢の中だけでも君と愛しあえたら……”
ささやかな願いも掻き消して、暖かく柔らかい照明の中、おこなわれる“行為”は暖かさとも、柔らかさとも真逆で冷たく、残酷で……
“ぁ…あっ……意識……混じって……助けて……
助けて……しゅ…………”
本来の目的は、愛し合う者達がより愛を深める場所、如何わしい夜の街の片隅に佇むラブホテルの一室で、まだ少年の彼は自分の父親よりも年上の脂ぎった、見るからに下衆な男に抱かれて…否、凌辱されている。
「うっ…あっ…ぅ…いゃ…あぐっ…あっ……ゃ……助け……」
服を剥ぎ取られた露出させられた白い肌は汗が滲み、四つん這いにされた四肢は男の陰茎に後孔を突かれる度に震え……
「ぐすっ……ぅ…う…っ…やめ…て……」
普段なら笑顔が似合う整った顔立ちの美少年
、今は涙のせいで目の周りは赤く、慈悲を……助けを求める唇の端からは血が垂れ……
そんな彼を卑劣で下品な笑みを口角に浮かべた男は、
「あぁ…っ!? 気持ちいいだろっ!? まだまだ、たっぷり楽しませてやるからなぁ…
ゲヘヘッ!! 」
「ぎっ……ぐぅっ…やぁ……」
笑い声すら汚い男は、彼の苦痛に歪む顔に興奮を抑えきれず、昂った陰茎を彼の腰に何度も何度も捩じ込みベッドは軋む。
ギッ…! ギッ! ギッ! ギッ! ギッ! ギッ………
「あぐっ!?…ぐあ゛っ!…あっ!…あっ!…ゃ……あ゛っ…あっ………痛ぃ゛…で…す゛…
やめ゛…」
この凌辱は、いつまで続くのか……
彼にはもはや抵抗する力はなく、この貪るように行為を楽しむ男の他にも……窓際のローテーブルを囲むように置かれたソファに座り、各々に談笑する男達はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ、男と彼の行為を眺めている。
「オラッ! オラッ!! ギャラリーも居る
んだッ! もっと楽しませろやッ…あぁ゛!!
んで、ケツ緩くなってんぞ! 締めろヤ!! それとも、またオモチャで遊ばれてぇかぁ゛!? 」
ベットの周りには卑猥とも悪趣味とも思える玩具や刃物が散らばり、それら全てに幾度も使われた痕跡がある………
「ひぃ…ゃ…だぁ…締めますから…っ…もぉ…
痛いの……ゃめ…ぁ゛…!? 」
突かれながら、背中にナイフの刃があてられると男は「こりゃぁ…罰だぁ…」そう言って、
刃をスライドさせた。
「俺の善意を無下にしやがってッ! あんまり駄々捏ねてッと……白っちぃ背中が真っ赤んなっちまうぜぇ……? 」
「ぐぅ…ごめん…なさ…ぃ……ごめ…」
血が滲み出し、同時にじわじわと湧く苦痛に意識が遠退き朦朧とボヤけていく彼の視界に、ソファに座る男達が見える、影しか見えない欲望の塊共、下衆の権化は暗く蠢き
「次は俺だっ!」「ぐへへ…いや俺だぁ…」と彼を求め続け、彼の絶望を誘う。
“も…ぉ…嫌だ……楽になりた…ぃ……”
「ゲヘッ♪ 謹みを知らねぇ下衆どもが……
一番高ぇ金出したんだから、初物を俺が念入りに食っても文句は言えねぇ…だろっ!? 」
「かはっ!? ぁ゛…ぐ……」
蠢く影を他所に男はナイフをベット脇に置き、彼の腰をガッチリと掴み乱暴に腰の動きを加速させる。
「オラッ! オラッ!! 気持ちいいだろッ!? ローション無くても、滑るから便利だよな!! ガキの穴ぁよぉ♪ 締めろっ!
オラッ! 」
彼は、血の染み込んだシーツをギュッと握り締め歯を食い縛る……
「く…ぁ゛…ぃ……」
彼は首を横に振り、微かに抵抗してみせた……
その態度に男は「あ゛っ!? 」と苛立ちを
露にした声を出し、ベット脇に乱雑に置かれた注射器を手に取り……
「クソガキがッ!! こっちゃよ安くねぇ金払ってんだ!特製のカクテルお注射してやるからよ、ちったぁ楽しませろやッ!! 」
「やめ…!? ぁ゛…ゃ……」
プスッ……
首筋に針が刺され、カクテルと呼ばれた透明で冷たい薬液が身体に染み渡っていく感覚に歯がガチガチと震えだす……
「な…に…?…ぁ゛…がぁ……な…に……
身体がッ…ぁ…寒ぃ…頭が……冷え…ぅ゛…」
「俺特製のお薬だ、安心しろぉ…死にゃあ
しねぇ…多分なぁ…おっ?…おほっ♪ 絞まってきたぁ…」
「あっ…あ゛ぁアアあぁッ……!? 」
冷たい感覚は、彼の身体を徐々に熱く火照らせると同時に気色の悪い快楽に、陰茎から
無理矢理に精液を放り出させた。
「気持ちぃかぁっ!? きったねぇ汁撒き散らしやがって……俺の優しさにぃ…おッ!? 」
冷たさと火照りに身を捩らせ、痙攣する彼の後孔は、男の陰茎を絞めつける。
「ゲヘ…ッ…ヤりゃ出来んじゃね……ぉ…おおオおおォッ!? 出るぞッ! 出るじょッ!! 」
「あっ!? …ひぃ…いゃっ……あっぁ゛あああっ!!? 」
バチュッ! バチュッ! バチュッ!! ……
後孔から滲む血と男の先走りの混じる穢れた水音が激しく荒くなって、彼の腰を掴むゴツい男の両手は肉に食い込む程力が入る。
「オおおォ!! あ…りがたく受け取れっ!!
う゛っ…っ……!!? 」
ブュリュ…ビュル…
「ぐっ!? アぁあ…あ゛ぁァ……あぁ……ァ…
げぇ……ぇ…」
熱く濃厚な気色の悪い飛沫が彼の中に注がれていく……その嫌悪感は彼を嘔吐させ……
「うっ…げぇ……げほっ……あっ…ぐぅ……」
欲望を残らず彼に注ぎ終わった男は、ベット脇に置いたナイフを持つと背中に尖った先端を突き立て引っ掻く……
「ぁア゛あぁ!?! …ぃ゛…たぃ……ぃ…」
ヌボッ……と赤く染まった陰茎を彼から引き抜くとベット脇に置いてあるタバコに火をつけ、ソファに座ると彼を睨む様に見る。
「きったねぇんだよ……クソガキが……ッ
萎えちまった……おい! 次のヤツ……好きにしてイイぜぇ…もぅ初物でもねぇし…飽きちまった。」
ベットに横たわる小柄の彼…少年の意識は
薄れていく……ソファに座っていた影が次々
立ち上がると、少年の脚を腕を身体を掴み…引き摺っていく…その行き先は暗闇で、拒否も抵抗も許されない……
「たす…け……て……」
引き摺られながら絞り出す、か細い声……
タバコを吸う男の顔、それは目も鼻も存在しない人の形をした暗闇に変わっており、
声に反応したのか、その暗闇に歪な横線が入り…歪曲する……
理解は出来ない、だがその歪曲は少年を嘲笑っている……
“それだけは……わかる……”
………………
………
…
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