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第1話

「雨降りそう」 その言葉を聞いて窓に目を向ける。 薄灰色の雲が遠くに見えて、鮮やかな空をゆっくりと自分の色に染めていく。 夏の蒸し暑さの中ほんの一瞬だけひんやりとした空気がカーテンを揺らし部屋に入ってくるのを感じた。 「雨降る前に帰ろうかな」 机の上に広げられていたノートや教科書を鞄にしまい始める彼の顔をばれないように盗み見る。 彼への気持ちが友情ではないと気づいたのはいつだっただろう。 確かあの日もこんな天気の日だったような気がする。 パラパラと軽快な音を鳴らしながら降り始めた雨に二人で空を見る。 さっきまで綺麗だった空は暗く影を落としていて、まるで今の自分を見ているような……そんな錯覚をしてしまう。 「降ってきちゃったね。傘持ってないや……」 「止むまで待ってれば?濡れるのいやでしょ」 うーん……と悩む彼に窓を閉めながら、もう少しだけ一緒にいたいんだよ気づけよバーカと心の中で悪態を付く。 鈍感だけど優しくて、笑うと小さな子供のように可愛くて。 そんな彼が愛おしくてたまらない。 「んー、じゃあもう少しだけいようかな」 そう言いながら笑う彼ににやけそうになる顔を隠しながら頷く。 このまま雨が止まなければいいのに……なんて。

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