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【1】もしも生まれ変わったら異世界へと思っていたら、転生先も俺でした。
「さすがは第二王子殿下だ。そのお力、もっと民草のためにお使いになってはいかがですか?」
来た。知っている。これは、"フラグ"の一つだ。俺は前世で思いっきりYESと答えて大変な目にあった。俺に話を持ってきたのは、十年後には宰相になるアルバース子爵家のユーリスだ。現在彼は23歳。俺は13歳。そして現在17歳の俺の異母兄と手を組んで、俺を社会的にも生命的にも抹殺するのはこやつだ。俺は、"覚えている"のだ。
元々俺の国、ワールドエンドは、建国した始祖王が異世界ニホンからの転生者だったという伝承が残っている。生まれ変わり伝承が根付いているのだ。ゲンダイという世界だそうで、カガクというものがこの国で言うところの魔術のように溢れているらしい。
俺は死ぬ間際に願った。それはもう強く願ったものだ。
生まれ変わったらゲンダイニホンに行きたいと。異世界で幸せに暮らしたいと。
それがかれこれ、33年+13年ほど前のことだ。
辺境の掘建小屋に軟禁され、食事は日に一度、水のように薄いスープと固くて噛めないパン一切れ。前世で俺は25歳で軟禁され、33歳で処刑された。
俺、結構頑張ったと思ってたんだけどな。
まぁいい、もう昔の話は忘れよう。いいや、忘れてはいけないのだけれども。
「俺の召喚獣の召喚魔法円の在り処? ラクラスを従えたけりゃ勝手に探せ。あいつが貴様らに制御できるとは思わないがな」
その言葉を最後に俺は処刑され……目が覚めると眩い光に包まれていた。
おぎゃあおぎゃあと自分が泣いていることを、冷静な理性が理解していた。
俺を抱きかかえているのは、黒い髪に緑色の瞳をした美女だった。
その姿は、絵画の中だけで知っている早くに亡くなった母にそっくりだったから、初めは天国あるいは地獄へ来たのかと思った。しかし続いて涙を流して笑いながらこちらを覗き込んできた青年を見て身が竦んだ。異母兄にそっくりだったからだ。違うのは、彼は青い目をしていて、兄は紫色の瞳だったということだけだ。しかしこの色彩にも見覚えがあった。父上にそっくりだ。父上も若くして流行病で亡くなった。やはりここはあの世なのか? そう考えていたら、感極まったというような声が響いてきた。
「私とミラルダの子だ。名は、フェルとしよう。第二王子の生誕を祝う宴を!」
……ん?
そこで俺は、思考が停止した。
フェルというのは、紛れもなく俺の名だ。そして俺も第二王子だった。
ミラルダは母の名だ。その上父にそっくりの人が今も父親らしい。
いやちょっと待て、これって、これって、そのまんま俺じゃないのか?
――いいや、まさかな、気のせいだ。
最初こそ、そう言い聞かせたものの、現実は残酷だった。
わずか0歳にして、俺は文字も会話も理解できた。当然だ、死ぬ前から変わっていないんだからな! 俺の側からはまだ喃語がせいぜいといったところだったが。
そう、そうなのだ。
もしも生まれ変わったら異世界へと思っていたら、転生先も俺でした。
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