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第13話
「嘘、あ、嘘、あ、あ、ああ、ダメだ、ダメだ、待って、待って、あ、あ、ああ」
「やだね」
「うあ、あっ、ひあ、あ、ヒっ!!」
何とか逃れようと、腰を浮かせたが、少しだけ浮かせる事しかできず、すぐに力尽きて、より奥深くまで貫かれる形となった。まだ、絶頂も残っている。まだ、波が引ききらない。気が狂いそうだった。俺は頬が涙で濡れている事を上手く理解できないまま、何度も腰を持ち上げては、ローラの陰茎を抜く事に失敗した。そして無我夢中で髪を振り乱して泣いた。
「いやああっ、だめだ、気持ち良い!!」
「だろ?」
「あ、ああっ、あ、あ、あ、あ、また、またクる」
「好きなだけ果てろ。中だけで、な。前はまだ、ダメだ」
「あア、ンぁ、あ、ああっ、あ、あ、ア――!!」
俺はローラに思わず抱きついて、震えながら、二度目のドライを迎えた。するとローラが驚いたように硬直したが、かまってなどいられない。泣きながら快楽に耐えていると、今度は内部で、ローラの飛沫を感じた。すると再び、世界が真っ青に変わった。そして、プツンと、俺の理性は途切れた。
「――、ぁ……」
次に気づいた時、俺は昨日と同じように、四つん這いになっていた。猫のような体勢で、後ろからユルユルと貫かれていた。舌を出し、俺は熱く甘い吐息を逃していた。最初からスムーズだと思っていたが、現在では段違いであるらしく、ゆっくりとローラのものが進んでくる時、俺は彼の形だけでなく、速度を意識できるようになっていた。引き抜かれる時は、寂しくて切なくて、そうしてゆっくりと入れられる時は、全身に甘い快楽が響いてくる。俺の腰を持っているローラは、腰を進めながら、時々荒く吐息している。彼も、感じているのだろうか? そうだったら、嬉しいのにと、何故なのか思った。
「ぁ、ァ、ァっ、あ」
「どうして欲しい?」
「もっと早くしてくれ」
「ふぅん。じゃ、もっとゆっくりとだな」
「あ、ああっ」
ローラは、意地悪だ。俺の頼みとは逆の事ばかりする。
ゆっくりとゆっくりと、さらに緩慢になった抽挿に、俺は震えた。焦れったい。しかも、奥深くまで貫くくせに、俺の感じる場所は、突いてくれない。
「ゃ」
「ここが好きになるまで、こうやってやろうか?」
「ぁ、ぁあっ、あ、あ、好き、好きだから、だから、もう」
俺は、反対の事を言えば良いと理解していた。
「ふぅん? じゃ、ここだけで良いか」
「!!」
しかし、ローラは小馬鹿にするように笑うと、俺を虐め始めた。
「ゃァ、っ、ッ、んあ」
そこじゃない。俺はそう言いたかった。だが、言葉にならない。息ができないくらいもどかしかったのだ。
「ン!」
その時、僅かに角度を変えられて、両手で左右の乳首をきゅっと摘まれた。俺の体が蕩ける。目を閉じると、涙が溢れた。ジンと響く甘い快楽が、胸を擦られる度に広がる。続いて今度は、左手はそのまま乳頭を弾きながら、右手では陰茎を握られた。果てる事ができない、陰茎を。
「あ、ああっ、あ、あ、ああっ、だめ、だめ」
「ダメばっかりだな」
「出したい、出したい、な、なぁッ……ン!」
「んー、そんなに?」
「うん、うん。あ、ああっ、ハ」
頭の中が、射精したいという欲望以外、思い描けなくなっていく。俺の濡れ切った鈴口を親指の腹で撫でながら、ローラが笑っている気配がする。
「ひ!」
その時――乳頭を弾かれ、強く陰茎を擦り上げられ、さらに不意に中の前立腺を突き上げられた。三ヶ所同時に快楽が襲いかかってきた。目を見開いた俺に、さらに四つ目――「あああああああああああああああ!!!!」
ローラが、俺を噛んだ。俺は、射精したのを感じるのとほぼ同時に気絶した。
「またお越し下さいね」
気づくと俺は、店のエントランスの扉の前に立っていた。あれ、いつ終わったんだっただろうか? まだマッサージ中に眠ってしまった微睡みが失せきっていないのか、頭がぼんやりとする。ちらりとローラを一瞥すると、彼は猫のような瞳で優しく笑っていた。だが、何故なのかその瞳が、獰猛に変わる姿を、俺は知っている気がした。何故だろう?
そういえば、最近は、来店した頃には砂鳥くんを見かけるのに、帰りには見ない。俺が大抵いつも最後の客らしいから、彼はバイトを終えているのだろうか? 俺にはよく分からない。
「ああ。また来る」
俺は、腰――と言うよりも、全身に気怠さを覚えながら、その日店を後にした。
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