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第17話

「あー!? 誰の金でご飯食べてると思ってるんだ、このヤブ医者! お前のクリニック、ほとんど人こないだろー! 「……うるさい」 「葬儀だって大切な仕事だ!」 「俺は死んだあとじゃなく、生きてる人を救いたいんだ」 「ご立派なことだな! けどな、だったら――救急のバイトで入った金、さっさと家に入れろこのバカ! お前は大人しく外科にいけー! 人を切り刻む才能に長けてるんだからそれを伸ばせー!」  俺は叫んだ。昼威と俺は、別段仲が悪いわけではないのだが、この土地の方言というか……後は、何だか気軽に兄弟喧嘩が出来る関係なのだ。朝儀より、距離感が近い。  ちなみに次兄のクリニックは、月・水・木・土の午前十時から十二時と午後三時から夕方七時まで開店している。しかしながら、患者は、二週間に三人来たら良い方らしい。だから専ら、兄は、救命救急で、バイトをしているのである。そちらでの方が、兄の腕は買われている。だから、週末は特に、平日もクリニック終了後には、ほぼ救急のバイトをして、昼威は食いつないでる。しかし、寺に金を入れてくれない。光熱水、払っているのは、俺だ。その鬱憤もあって、俺は昼威の服を一瞥してから続けた。 「第一、手術着でうろうろすんなって言ってるだろ!」 「……汗をかいた時、手術着の方が楽なんだ。今、夏だし」 「どんな言い訳だ!? この三十路独喪男!」 「独身貴族と言い直してくれ。それに、それだけは、お前には言われたくない」  俺に、ブーメランが直撃した。三十路にも俺は迫っているのだった。  それにしても、顔がよく似ている俺達二人がそろってモテず、似ていない朝儀が子持ちの寡夫という事は、もしや……考えたくないが、俺達の顔が悪いのだろうか? 鏡を見る限り、ごく普通だと思うのだが……。 「それより……その、悪い、二万円程、貸してもらえないか?」 「あーっ、やっぱりそれで帰ってきたのかよ! 昼威! お前、使いすぎ!」 「頼む……!」  実は、俺の次兄は、俺よりもある種高給取りなのだが、浪費癖があるのだ。迷惑防止条例に訴えたいレベルで、俺に金を要求してくる……。 「今度は何に使ったんだよ?」 「……フロイトの直筆の原稿がオークションに出ていてな……」 「そんなもん贋作だろ、どうせ」 「落札してしまった……」 「あーもう……」  ……まぁ、使い道が、俺には分からない学問関連であるため……俺は、ついついお金を貸してしまう。そんなこんなで、お惣菜を食べながら、夜が更けていった。

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