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第2話

皆んなはアイスバースというものをご存知だろうか? 世の中には、"アイス"と"ジュース"という2種類の特別な性質を持った人間が存在する。 アイスは人より少し体温が低く、ジュースに至ってはこれといった特徴がないのだそうだ。 だから一般人とそう変わらない。 なのに何故、アイスとジュースと呼ばれているかというと、アイスとジュースが結ばれると、アイスの性質を持つ人間は水のように溶けて消えてしまうらしい。 そして、ジュースはアイスのような特徴がないために、アイスを溶かしてしまったときに初めて、自分自身がジュースだと自覚するそうだ。 都市伝説のようなものだ。 アイスとジュースの存在自体、本当かどうかは定かではない。 科学的に証明されているわけでもないし、いくらネットや資料館を探しても、実際にアイスが溶けている瞬間が残された記録は存在しない。 残されている事実は、自分の恋人が目の前で水のように溶けて消えてしまったという証言だけ。 一時期話題になったが、その証言すら10年以上前のもので、いまやアイスとジュースは、時々恋愛ドラマや小説のジャンルとして扱われるほど、浮世離れした存在だ。 世間ではアイスとジュースの恋は、運命だなんて言われている。 でも、結ばれると消えるだなんて、そんなの運命と呼べるのだろうか? 皆んなはドラマや漫画、小説の世界でしか聞いたことがないから、そんなこと言えるのだと思う。 かく言う俺も、アイスバースの存在なんて信じていなかったし、自分には無関係なものだと思い込んでいた。 彼が目の前で消えてしまったあの日までは。

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