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第7話 二度目と、初めて(4/13)
横向きに寝転がり、向き合えば、俺を真っ直ぐ見つめてくる黒い小さな瞳。
幸せそうに微笑んで、ルスは俺に口付けてくれる。
そっと離れた唇。ルスの小さな瞳がゆっくり開く。
ルスは、ちょっとだけ照れくさそうに言った。
「俺に……入れるか?」
くっ!!
自分から言ってくれんのかよ!!
思わず頷きまくりそうになるところを、グッと堪える。
「お前、もうイキそうだったろ? 先に出しちまえよ」
キョトンとルスが俺を見る。
くそっ、その顔は、可愛すぎんだよ……。
ふ。とルスが目を細める。
「そうか……。有り難く、お前の言葉に甘えるとしよう」
俺は、ルスに潤滑油のボトルを手渡す。
部屋の明かりは、初めからつけていない。
あの日みたいだな……。と思うと、それだけで俺の内に熱が生まれた。
まだこのルスは、あの日の俺を知らない。
あんな風にあられもない姿を、またルスの前で見せることになるのかと思うと、俺はどうしようもない羞恥と期待が胸に混ざった。
「レイ……好きだ……」
耳元で低く囁かれ、太い腕で抱き寄せられ、口付けられる。
深く深く唇を重ねて、強く吸い上げられれば、それだけで頭は真っ白になった。
な、ん……だよ、お前、そんな……優しい声で……。
割り入れられた分厚い舌に上顎を撫でられれば、ぞくりと腰が震える。
「……ん……ぅ……」
好きだと囁かれた言葉が、いつまでも胸に留まって、熱い。
俺は、ようやく大きな違いに気付いた。
今のルスは、俺に愛を囁いてくる。
……っ、こんなん、反則だろ……っ。
じわりと熱を持つ全身に戸惑う間もなく、ルスが俺の後ろへ、どろりと液体を纏わせた指を這わせる。
びくりと肩を震わせれば、ルスはもう片方の手で優しく俺の肩を撫でた。
その小さな優しさにさえ、俺の胸は震えてしまう。
ルスは俺の口内を犯しながら、内へと指を挿し入れた。
「んぅっ……んっ……ん」
心臓がどくりと脈打つ。期待と、与えられる圧迫感に息が上がって、少しだけ苦しくなる。
ずぶずぶと入り込む指は、すぐに二本に増やされる。
「んんんっ……」
やべ……なんか……腰動きそ……。
このルスはまだ、俺のイイとこを知らない。
そこに、触れて欲しくて、思わず腰が浮きそうになる。
ルスは唇を離すと、俺の首筋を舌でなぞりながら鎖骨へと降りてくる。
「ぁ……は……ぅぁ……っ」
後ろをぐちぐちと広げられながら、ルスの温かな手に胸を撫でられる。
小さな胸の突起にルスの指先が引っ掛かれば、びくりと体が跳ねた。
「ぅあっ」
じっと俺の鎖骨の辺りに口付けていたルスが、含み笑うように言う。
「お前は、胸も感じるのか?」
「っ、悪かった、なっ」
「いいや、可愛い」
ニッと口端を上げて、悪戯っぽい表情でルスが答える。
なっ……!?
余裕の無さから思わずついた、俺のしょうもない悪態も、ルスは容易く受け止めて包んでくる。
黒い瞳は、愛しげに俺を見ている。
……何だこれ。絶対前より男前度増してるだろ!?
ああ、そうか。前はまだ、ルスにとって俺は、男友達の延長線上だったんだ。
それが、今のルスは記憶が飛んだとこから俺を恋人だと認識して、そこから順に記憶を取り戻してったから……。
「あぁあっ!」
びくりと腰が浮いて、思考が途切れる。
ルスの指先が、俺の内側から前立腺を擦った。
ルスは一瞬目を見開いて、それから、何かを理解したような表情で、俺が跳ねたあたりを探ってくる。
「ぅ、あ……っ、あぁあっ! んっ、ぅ、ゃぁあっっ!」
ルスにぐいと押されれば、その度に腰が跳ねる。
おま、え、そこばっか押すなよっっ。
ルスは三本目を入れるつもりか、一度抜いてもう一度指を入れてきた。
「ぅぁ、あ……ん、んんっ」
さっきより太い指の束が入り込む感触に声が漏れる。
圧迫感よりも、それをもっと奥へ欲しい疼きがずっと上回る。
「も……、早く、入れ、て、くれよ……っ」
上がる息の合間から訴える俺の言葉に、ルスは嬉しげに苦笑して応えた。
「ああ。可愛い事を言う奴だな……。俺に乗るか?」
「ん……」
俺はコクリと頷く。
ルスが俺を愛しげに見つめているのが、くすぐったくて、でもすごく気持ちいい。
このままずっと、俺だけを見ててくんねーかな……。
ルスが足を引き摺るようにして仰向けになる。
俺は、ルスの上に、そっと跨った。
ルスのものは、もうはち切れそうなくらいガチガチで、先から幾筋も雫を溢している。
それでも、俺が解れるまで待っててくれたんだな……。
俺はルスの優しさを噛み締めながら、それを自身の穴へとあてがう。
ひた、と触れるだけで、自分の内側が期待に震えているのが分かった。
あ……。ルスが俺を見てる。
欲に塗れた瞳で、息を潜めるようにして。
俺の身体がルスのを飲み込むのを、瞬きもせずに、じっと見てる……。
「……っ」
体重を乗せれば、それだけでルスの物は俺へと容易く侵入する。
ズブズブと進むうち、指では届かなかった部分へと入り込む。
「あ、は……っ、あああっ、……んんんっ」
俺は声を堪え切れず、奥へと伝う快感に喉を逸らした。
う、あ……っ、やっぱ、ルスのは、デカくてイイな……。
ものすごく、俺ん中に入ってるって感じする……。
ぼんやりと蕩ける頭でそんな事を考えていると、不意にルスが腰を突き上げた。
「ぁああああんっ!」
あられもない声が漏れて、俺は赤くなる顔を覆う。
「おい、隠すんじゃない」
言われて、指の隙間から覗けば、ルスはくっきりした眉を寂しげに下げている。
何、お前……俺の顔見えないと、そんな、顔す……。
「や、あ、っ、ああっ!」
ぐいと腰を揺らされて、俺の思考は途切れる。
ルスは俺の腰を厚みのある両手で掴んで、角度を探るようにしながら揺らす。
「ぁっ、やあ……っ、んっっ、あぁあっっ」
硬くそそり立つルスの物が俺の内側を何度も行き来する。
おま……っ、ぅ……いきなり、激し……だろ……っ。
強引に繰り返される挿入に、心の中の文句すらうまく紡げない。
出入りするだけで、擦り上げられる内側が快感にびくびくと揺れるのに、ルスは俺のいいとこばかりを突いてくる。
「そ、こばっか……っっ、や、あぁぁぁぁあっっっ!!」
やべ……目の前、チカチカしてき、た……。
飲み込めない雫が、口端から溢れて顎を伝い落ちる。
ルスの上に零してしまっただろうか。
快感に滲んでよく見えない目を擦りながら、背を屈めると、ルスが俺の顔に指を伸ばしてきた。
求められたことが嬉しくて、その手に頬を寄せる。
ルスはそのまま俺の頭を抱え込むようにして口付ける。
愛しげにしっとりと口付けられてから離されると、小さな黒い瞳が熱っぽく潤んで、俺を見ていた。
「レイ……お前の中、すごくいいな……」
低く掠れた声で、ルスが囁く。
その声が酷く色っぽくて、俺は耳が熱くなる。
「……中でイッても構わないか? 外に出す方がいいか?」
ルスの言葉に、あの日、内に放たれた熱が蘇る。
「あ……、ナカに……欲し……」
快感に蕩ける自分の声は、自分でも驚くくらい甘い響きだった。
「そうか。なら、たっぷり注いでやろう」
ニッと笑ってルスが応える。
ぞくりと身体が震える。また、それをもらえる期待と喜びに。
ルスが、下から突き上げる。
「ぁああっっ、んんんんっっ!!」
奥の、さらに奥まで侵すように。
俺の腰をゆらゆらと前後に揺らしながら、ルスは下から上へと小刻みに突き上げる。
「ぁぁ、ぅ、んんん、んんんぅぁぁぁんんっ」
ぁ、……これ、すげ……気持……い……。
繰り返される快感に、頭の芯がじんじん痺れる。
「ふ、ぅ、ぁっ、ぁああぁんっ」
ルスが俺の昂りに応えるように、深く、鋭く突き上げる。
ああっ、そこ、すげぇ……いい……っっ。
前もこんな感じで、ルスにガンガン突き上げられて、それで…………。
思い出の中で蘇る初めての快感が、現実の快感と混ざって膨らむ。
「あっ、あっっ、ああああんんんっ、い、イイっっ、そこ、イイ、よぉ、ルスぅっっ!!」
ガクガクと揺さぶられて、俺はルスの肩に縋り付く。
俺の耳元で、ルスが小さく笑うと、低く告げた。
「……イクぞ」
心も身体も、期待に熱く高鳴る。
ルスの速度が上がれば、俺から嬌声は止めどなく溢れた。
「あぁあんん、ルスっっ、来てっっ、俺の、ナカっぁぁぁぁあんっっ!!」
あまりの快感に、ルスの上でどうしようもなく身を捩る。
まるで泣き声みたいな、縋り付くような声が止まらない。
ルス……、ルスが、額に汗を滲ませて、俺を見てる……っ。
喜びが快感に変わる。
甘く痺れる感覚が、もう溢れすぎて、これ以上……受け止められな……。
「ぅ、あ、ああぁああぁんんんんんっっ!!」
俺の内側が収縮を始める。
もっともっとルスを感じたくて、ルスのそれを身体の内に抱き締めるように。
ルスのそれが、俺の中でどくりと脈打つ。
ぎゅうぎゅうと締め付ける俺の内側で、ルスの物が強引にその奥へと進んだ。
「あぁああああぁっっ! だ、めだ……っっ、これ、いじょ……っっっ!」
ぱち。と目の前で火花が飛ぶ。
大きく波打つようにルスの物が震えて、俺の奥に、ルスの欲がぶちまけられる。
「んんんんんんんんんんんんっっっ!!」
目の前でチカチカと光が弾ける。
溢れ返るほどの快感に、必死で歯を食いしばる。
奥が燃えるように熱い。身体が溶けてしまいそうだ……。
「……っ、く……」
ルスが小さく漏らした声が聞こえる。
ルスの……ルスの顔が見たい……。
俺は、快感に耐えきれずギュッと閉じてしまった目を、何とか片方だけそろりと開く。
「は、……あっ、ん……ぅぅん……っ」
身体はまだ痙攣とじわじわと続く収縮を繰り返していた。
滲む視界の向こうから、ルスの顔が近付く気配がする。
くちゅ。と音を立てて口付けられる。
ルスの息が荒くて、何だかドキドキする。
「ふ、……ぅ、ぁん……っ、んん……」
俺の息は、まだ整いそうもない。
水音を立てながら、ルスは俺の口内へ舌を挿し入れる。
「や、め……っっ、んんんっ」
今は勘弁してくれよ……、まだ俺、気持ち良すぎて死にそうなんだよ……。
その胸を押して離れようとするも、体に力が入らない。
首を振ろうとする俺の頭を、ルスが大きな手で包む。
「や、あ……っ」
ルスの手があったかい……。
そのまま大事そうに引き寄せられて、奥まで口付けられると、俺の内側がまたギュッと絞られた。
「は……ぁ……」
閉じ切れない唇から、とろとろと雫が溢れる。
ルスはようやく唇を離すと、俺の顎を伝う雫を鎖骨のあたりから丁寧に舐め取った。
「……お前の唾液は、何だか甘いな」
ルスは、精悍な表情で俺を見つめたままに、自身の唇をぺろりと舐め、目を細めて言う。
やっぱ、ルスは、ほんっっっと男前だ……。
滲んだ目を擦る俺を、ルスは引き寄せて、俺の瞼に、額に、頬に口付ける。
愛を込められた口付けが、何だか幸せすぎて胸が痛い。
「……ん……」
声を漏らす俺を、ルスは慈しむように見つめている。
「レイ……、ありがとう。愛してる」
「っ!!」
まっすぐ伝えられた愛の言葉に、俺は狼狽える。
ルスは、俺の背から乱れて零れた僅かな金髪を手のひらですくい上げて、そっと口付ける。
う。それ前もしてただろ。くそう、何度見ても様になる仕草だな……。
「お前の、明るい金の髪が好きだ……」
ルスの甘い囁きに、俺が顔を真っ赤にして見惚れていると、ルスは俺の目元を指でなぞる。
「お前の、宝石のような青い瞳が好きだ……」
ルスは俺の頬を手のひらで包む。
「お前の、すぐ赤くなる頬が好きだ……」
うっとりと、黒い瞳が細められている。
な、何、お前……、俺の顔、好きなんだ……??
お……、俺の方がずっとずっと、ルスの顔好きだけどな!?!?
軽く混乱している俺に、ルスはもう一度そっと口付けて、囁いた。
「レインズ、お前が好きだ」
「……お、俺も……っっ!」
俺は、ようやく気付いた。
まだ俺は、今のルスに好きだと伝えていない事に。
俺は、まだ小さく震える身体を抑えるように、目を閉じて深呼吸する。
しんと落ち着いた心でルスを見れば、俺には自然と笑みが浮かんだ。
「俺も……。ルストック、お前が好きだよ。好きで好きで、たまらないんだ」
「レイ……」
ルスは嬉しそうに頬を染めて笑った。
ああ、可愛いな……。
こんなルスの笑顔を、俺はずっと、そばで見ていたかったんだ。
「俺は、もう二度と、ルスから目を離さないからな」
俺が決意を込めて伝えると、ルスは男らしく笑って言った。
「ああ、そうしてくれ」
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