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第27話◇

 はあ、とため息をつく。  絶対、だめだっていうのは、自分で分かってる。  せっかく話せるようになって。笑顔、見せてくれるようになったのに。  アホみたいにやらかしたら、アウトだからな。  めちゃくちゃ自分に言い聞かせてる内に、大分温まって、顔がほてる。 「……あっつ……」  もう風呂出たら、このまま布団入って寝ちまいたいな。  今って……22時位だっけ? 23時位……?  浴衣の先輩と一緒に酒飲むとか。  ……精神修養じゃねえんだからさぁ……。  木の湯船に腕を置いて、その上に顔を倒す。  ため息をついていると。 「三上ー? 長すぎない?」  ガラガラと扉が開く。  ……あ、先輩。   「え。三上? 倒れてる???」 「いや。……大丈夫ですけど……」  前に寄りかかっていた頭を、よいしょ、と起こす。 「……いやいや、なんか、大丈夫そうじゃないから、出て?」 「別に平気ですって」 「いやいや、顔真っ赤だし!」 「出ますよ、大丈夫ですって――――……」  ……すげーくらくらする……。  立ち上がりかけて、襲われた眩暈に、とっさに湯船に手をついた。 「わー、もう何やってんの、三上、とりあえず出て座って」 「い、いです、水浴びますから」 「ダメだよ、のぼせた時急に水浴びちゃ。いーから座って、タオル貸せよ」  言われるまま、椅子に座って、タオルを渡すと、先輩が水で冷やして、足にかけてくれる。 「あと水、少しずつ飲んで。窓開くかなあ……あ、ちょっと開いた」  渡されたペットボトルで水を飲んでいると、先輩が窓を開けた。  風がすーと、通っていく。 「……すげえ、風気持ちいいっすね」 「気持ちいいじゃないよ……」  先輩が苦笑い。 「いつも湯舟入るけど、のぼせないんですけど……」 「温泉って温まりやすいから。しょうがないけど。途中で気付けよなー、顔、すげえ熱くなかった? 真っ赤だけど?」  クスクス笑いながら言って、先輩は濡らし直したタオルをまた足に置いてくれる。 「あ、ちょっと待ってて」  言って部屋に戻った先輩は、持ってきたタオルを濡らして、オレの頭に乗せた。 「気持ちいい?」  落ちないように押さえながら、先輩が笑う。  超至近距離の、キレイな笑顔を見上げてしまって。 「――――……じ、ぶんで、押さえますから」 「ん」  先輩の手からタオルを受け取って、額に当てる。  だから――――……。  この人、距離が、近すぎなんだって。  顔を隠したまま、少しじっとしていると。  少し楽になってくる。顔からタオルをどかしながら、は、と息をついた。 「……良くなってきました」 「あ、少しは冷めた?」 「はい。すみません」 「いーけど」  クスクス笑いながら。  先輩、また足に冷たいタオルを乗せてくれる。 「顔、赤み引いてきたかな?」  そんな事を言いながら、下から、見上げてくる。 「――――……っ……」  キス。したい。  のを、かろうじて、止まった。 「――――……もう、大丈夫、です」 「ん、そう? 立てる?」  ゆっくり立ってみせて、シャワーに向かうと。 「大丈夫そうかな。水じゃなくて、温いお湯浴びて来な?」 「はい」  頷くと、先輩は、何かあったらすぐ呼んで―、と言いながら出て行った。  ――――……はー。もう。  ……オレの、くそ馬鹿。  のぼせるとか。  超カッコ悪いし。先輩に世話かけて――――……。  で、キスしたいとか、思っちまうとか。  馬鹿だなー、マジで。

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