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第29話◇

「三上は嫌なのかもしれないけどさ、親子3人、瞳が似てる」 「……親父と兄貴とですか? ……似てます?」 「まっすぐ人を見据える感じ」 「――――……」  親父と兄貴ほど眼光ないと思うけどな。 「志樹は、たまにめっちゃ怖いけど……目線で黙らせるみたいな。 社長の後継ぎって聞いて、あーなるほどーて、思ったけど」  可笑しそうに笑って、先輩はオレをまっすぐ見つめる。 「何の話だっけ…………あ。だから……木原さんだ」 「ん?」  あ、またそこに戻る? 「まあ別に男だし減らないし、奥さん居るし、志樹とかお前が心配するようなのは、勘違いだとは思うんだけどさ」 「……」 「まあ、オレも、多少は、面倒くさいなーとは思ってたからさ」 「え?」  あ、少しは気付いてた?のかな? 「……だって、オレ、もう担当じゃないんだぜ? なのに、京都まで会いに来い的なさ。さすがに1人は嫌だなーと思って、京都のミスった奴を絶対一緒に連れて行こうと思ってたんだけどさ」 「――――……」 「でも、三上、来てくれて、良かった」 「――――……」 「最後仮病だとは思わなかったけど。なんかそこまでも、ガードしてくれてたよな?」 「……してましたけど」 「ありがとな」  ふ、とキレイに笑んで、先輩がそう言う。  どき、と胸が弾む。 「まあ、でもさ」 「――――……」 「食事位なら別に付き合ってもいいけど――――……それ以上、何かされそうになったら、さすがにオレだって、断るから。大丈夫だから心配しなくていいよ」 「――――……そりゃそうでしょうけど」  無理やりとか。 あるかもしれないし。  あんた、細いし。  とか言ったら、気を悪くすると思うから言わないけど。  まあいいや。  ……取引先なら、この先は、オレが一緒に居れば。 「もう1本飲もっと」 「あ、オレ取ってきますよ」  オレの方が冷蔵庫に近いので、立ち上がろうとした先輩を止める。  冷蔵庫を開けると、結構な種類の缶が入ってる。 「先輩何飲みますか?」 「んー、何がある?」 「カクテル系と、サワー系と、ポン酒もありますよ?」  缶を取り出しながら読み上げていると、ふ、と影が出来る。  思わず見上げると、先輩が来てて、隣にしゃがんだ。 「んー。何にしようかなー……」  だからー。  ……近えんだって。  触れてしまいそうな位。 「三上も、もう飲む?」 「……飲みます」  ……飲んでやる。 「何飲む?」 「ポン酒」  答えると、ぷ、と先輩が笑う。 「強そうだもんな、三上。部の飲み会とか、上の人達の酒、平気で飲み尽くしてるもんな」 「……強いんですよね、オレ」  おかげで酔いたい時も酔えないけど。  まあ少し眠くはなるので、もうそれを期待しよう。 「ポン酒、種類あるけど。こっち?」 「いや。こっちでいいです」 「ん。じゃオレ、梅酒が良い」 「はい」  至近距離で受け取って。先輩が立ち上がった。 「オレちょっとトイレ行ってくる」  先輩の声に頷いて、オレは、先に座って、日本酒を口にした。  あ、これうまい。  そんなに期待しないで飲んだ味がうまくて、銘柄を眺めてると。 「ただいまー」  言いながら先輩が戻ってきて、何でだか、隣に座った。 「は?……何でこっちに座るんですか?」 「なんで? ダメなのか?」 「だめっつーか。普通、向かいに座りません?」 「なんか遠いし。いーじゃん、乾杯しよーぜ」  言いながら、ぷしゅ、と梅酒の缶を開ける。 「はい、カンパーイ」 「今度なんの乾杯ですか」 「……んー。何だろ、分かんないけど、乾杯」  あは、と笑って、合わせてくる。 「何すか、それ」  ――――……結構酔ってんのかな。  近くで見ると、顔、少し赤いし。  つか。  マジで、何で隣に来るんだ。  まあさ。デカいテーブルだから、隣と言っても、結構離れてはいるし。  別に友達同士でこーやって座る奴らが居たって、不思議じゃない感じではあるのだけれど。  今、オレの隣に来るのは、マジで勘弁してほしい。    

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