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第69話◇モヤモヤ解消

 ……落ち着こう。一旦。  丸投げの全投げしてきといて、そのくせ、「最後って何」って。  ――――……落ち着け、オレ。  女との普通の行為は理解してて、経験値あるんだろうけど。  ……多分、男同士って事で、全然何も浮かばない、って事なんだろうな。  昨日の事があるから、あそこまではとりあえず分かってて。  あれをもう一度って事ならしたい、と思ってるって事で。  それ以上の事は、この人は全く考えてない状態。  でもって、オレが嫌なら昨日のもできないから、やめるし、って事でさっき先輩は話をしていて。  一応、オレとの今の会話で、それ以上もあり、て事が、多分ようやく分かった所っていう事で。  この人の考えてるのは、そういう事、なんだよな。  ――――……オレは何が聞きたいんだろう、この人に。  なんかさっきから物凄い、モヤモヤしてんのは何だろう。 「……三上?」  しばらく黙っていたら、先輩がまた少し首をかしげてる。  ――――……ちょっと首をかしげるの、癖なのかな……。  仕事ん時はしてない気がするけど。  ……きっと、仕事ん時は全部分かってやってるからしないんだろうけど。  今この会話、きっと分かんない事がいっぱいあるんだろうなぁ……。  なんなのかなー、この人。  こんなモテそうな顔して、適当に遊んでそうな気すらするのに、なんかウブなのって。  ……可愛すぎるんだけど。  その首を傾げる癖も、ちょっとオレの前でやるのは、やめて欲しい。  傾げながら、じっと見つめられると。  もはや、今となっては、キスしたいとしか、思わないし。  あ。  ――――……分かった。  すげえモヤモヤしてるのが、何か。 「あの――――……よく考えてから、答えてほしいんですけど」 「……ん、分かった」  先輩がまた少し緊張した顔で見つめてくる。 「――――……それ、オレじゃなくても、しますか?」 「……?」  また意味が分かんないって顔。なんかこの顔見てると、ハムスターが困ってるイラストしか浮かんでこなくて、可愛くてほんと困る。 「……キス、友達に頼んでみようかなとか言ってたじゃないですか」 「……ああ――――……うん、言った……」 「……オレが断ったら――――……そうするんですか?」 「――――……」  モヤモヤしてんのは、こっち。  オレは、あんたじゃなきゃ、男にそんなこと、絶対しないから。    だから、オレが断ったら、別の誰かに頼むとか、そんな気で居るなら。  ――――……オレは、したくない、かもしれない。  少し俯いた先輩をまっすぐ見つめて、返事を待ってたら。  先輩は、何度か瞬きをして。それから、視線を上げて、オレと合わせた。 「三上だから話せた気がするし。……三上じゃなきゃ、したくないよ」 「――――……」  瞬間、真っ白。  聞いた時に、何て答えてほしいとか思って言った訳ではないけれど。  言われた瞬間、これを言って欲しかったのかなと思う位。  望んでた答えだった気がする。  モヤモヤしてたものは、完全に晴れた。  こういう答えを返してきてくれるのは。  ――――……なんかさすがだなーとすら、思ってしまう。

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