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第183話◇side*陽斗 2

「――――……ふー……」  人の家で、その持ち主が居ないのに、シャワー浴びるとか。  ……人生初だよ、オレ。  なんかものすごい違和感はあるのだけれど、とりあえず、さっぱりはして。  バスルームを出て、リビングに移動した。  タオルで髪を拭きながら、何となく静かだと落ち着かなくて、テレビをつけた。冷蔵庫を勝手にあさる気にはなれなくて、途中でコンビニに寄って買って来たお茶を飲みながら、ソファに腰かけた。  一応明日の朝のパンも、パン屋で買って来たけど。  まだ好きなパンとかもいまいち分からなくて、無難なのを買って来た。  オレ、まだ三上の事、全然知らないんだよなぁ。  ――――……この2年、プライベートな話、してきてないし。  ……21時か。  打ち合わせとか言っても、せっかく同期で集まったんだし、最後は飲み会になるだろうし。まだまだ帰って来ないだろうなあ。  遅くに帰ってきたら、ちょっとしか一緒に過ごす時間無さそうだけど。  ほんと、オレ。  ……三上の誘い真に受けて、ここに居るけど。  これって良かったのかな。変だよなー、やっぱり。  嬉しそうな笑顔は浮かぶから、それが唯一の救いというか。  ……と、来た事をちょっと後悔する自分も確かに居るのだけれど。  きっと、帰ってきた三上は、また、嬉しそうに笑うと思うから。  ――――……それを思うと。早く帰ってこないかなーと、帰りを待ってしまう自分も居て。何だか、そんな事を考えてる自分が、くすぐったい。  その時。さっきテーブルに置いたスマホが、着信を告げた。  三上かなと思って、立ち上がってすぐに手に取ると、大学時代の友達。 「もしもし……|修司《しゅうじ》?」 『ああ、陽斗、今へーき?』 「うん。あ、こないだごめん、行けなくて」  こないだ京都に行った金曜は、出張がなければ、修司たちと飲む事になっていた。その事を謝ると、仕方ないじゃん、と修司が笑う。 「結構皆来たの?」 『んー、8人位だった』  ゼミやクラスで関わりがあったメンツが、適当に集まる飲み会で、全員きたら20人位になるのだけれど、皆忙しいので、全員が集まる事はほぼ無い。それでも、皆も居心地がいいのか、まだ定期的に集まってるし、グループも繋がってる。 『久しぶりに、|彩香《あやか》がきたんだよ』 「へえ、そうなんだ」 『陽斗に会いたがってた』 「そうなの?」 『まだお前の事好きなのかなー?』 「それは無いんじゃない? もう1年位会ってないよ」 『彼氏と別れたんだって。そしたら、やっぱり陽斗がいいと思ったのかなーと思って』 「無いと思うけど」 『でも会いたがっては居たよ』 「ふうん……?」 『陽斗、彼女は? 出来た?』 「――――……」  …………1ヶ月お試しで、彼氏は出来た。  心の中で答えて。  これ言ったら、えらいことになるだろうなあ……。  修司、何て言うかなあ。とちょっと興味は沸くのだけれど。  まあ言える訳もなく。  「ううん。出来てないよ」  ……「彼女」は、出来てない。うん。  何だかちょっと、心の中で言い訳してるみたいで苦笑いが浮かんでしまう。

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