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第198話◇コーヒータイム
瞳を伏せたこんな顔。
綺麗。目が閉じてると、なんか可愛い、かな。
こんな顔で、オレのキス、待っててくれるとか。
――――……正直、すごいコトな気がしてしまう。
この人のこんな顔。きっと、そんなに見た事ある奴、居ないよな。
彼女には、キスする方だろうし。
こんな風に、キスを待ったりは、そんなにしないだろうし。
と思うと。すごい、嬉しいんですけど。
やばい。
そっと頬に触れると。
長い睫毛がぴく、と動く。
……可愛いな。
ゆっくりと、唇を重ねて。
ちゅ、と小さく音、立てる。
「……ん」
先輩は、されるまま、瞳を伏せてて。
ほんとにこんな風にしてくれるの、きっとオレの前でだけだと思うと。
愛しさが、心ん中で大爆発しているけど。
だめだ、優しくするって、言ったし。
――――……そもそも、なんか、ふんわり幸せそうな顔して、安心してるっぽいのが、可愛くて。なんか。これ以上しちゃいけない気がするし。
柔らかく、何度かキスを繰り返してると。
不意に、引かれて。唇を離した先輩が、ちょっと俯いた。
「……陽斗さん?」
「――――……これは、これでさ」
「うん?」
「……すげー恥ずかしいけど。何でかな?」
そんな風に言われて、笑ってしまう。
「……オレがめちゃくちゃ可愛いと思ってしてるからじゃないですかね?」
「――――……っっ」
思った事をそのまま言ったのだけど。
もーむり、と言われて、ぐい、と引き離される。
なんか照れまくりなのが可愛いけれど、そこには突っ込まないことにした。
「コーヒー飲んだらそろそろ寝ましょうか」
「……ん」
少しだけ先輩から離れて、コーヒーを飲む。
「あのさ、陽斗さん」
「ん?」
「兄貴と飲む時って、いつも帰り遅いですか?」
「……うん。そうかな」
「じゃあ明日は来れないですよね」
「三上も、また飲みに行くんだよね?」
「まあ。はい。オレも祥太郎に色々聞かれてきます」
「ん」
先輩は頷きながら苦笑い。
「……三上は、友達に話しても、平気なんだな」
「――――……祥太郎は特別かも。……今までのことも全部知ってるし、なんか達観してる奴なんで、何言ってもそんな対して騒がないし」
「ふーん……」
「それでも、昨日は驚いてましたけどね」
思い出すとちょっと可笑しい。
少し笑っていると。
先輩にじっと見つめられる。
「志樹とオレはちょっと違うかも。全部とかは話してないし。オレが悩んでた事も、話してないし……」
「まああの人は――――……何を聞いても動じないと思うけど」
「はは。確かにね」
「どこまで話すかは任せます」
「――――……うん。ありがと」
「あ、片づけちゃいますね」
ちょうど二人とも飲み終えたコーヒーのマグカップを持って、流しで洗う。
「ありがと……」
先輩は、隣に立って、オレの手元を見つめてる。
すぐ終わりそうだから、手を出すまででもないと思ったんだろうなと。
でも近くに来てくれてるのが、なんか、嬉しい。
「うん」
頷きながら、笑んで見下ろす。
オレが背高くて、この人は標準なんだと思うけど。
ちょっと低い位置に居る。
抱き締めやすいし、キスしやすい。
ちょーどいいなあ。可愛いなー、なんて思ったりする。
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