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第200話◇後輩モード
朝食を一緒に食べてから着替えて、先輩の荷物をマンションに置きに寄るために少しだけ早く家を出た。
「陽斗さん」
「ん?」
「今日は夜別々ですけど……電話しましょうね」
「ん。……あ、でも、どっちかが遅かったら、無しな?」
「じゃあオレ早く帰ります」
そう言ったら、先輩はオレの顔をふと見上げて。
可笑しそうにクスクス笑った。
「オレは志樹との話次第だから、分かんないし」
「でも電話したいから」
「んー……でも遅かったら寝てて。あと、急いで帰らなくていいよ?」
「――――……陽斗さんはオレと電話したくねーの?」
あんまりに落ち着いた返事の数々に、ちょっとムッとして言うと。
じっとオレを見つめた先輩が、目をパチパチさせてから、クスクス笑った。
「遅かったら、だよ? 明日も仕事じゃんか」
「――――……だから。遅くても、電話したいって思ってよ」
「……思ってるけど。どっちかっていうと、オレの方が遅くなりそうだから、待たせるの悪いなと思ったんだよ」
「――――……分かってますけど」
むー、とオレが黙ると。
先輩はオレを見上げて、クスクス笑った。
「珍しい」
「え?」
「ちょっと駄々っ子みたい。いっつも、余裕な顔してるのに、三上」
駄々っ子……。
……最悪。
何だか恥ずかしくて、カッと顔に熱が走る。
ますます先輩、面白そうに笑う。
マンションについて、先輩がエントランスのドアを開けて、オレを振り返る。
「何なの、三上って、たまにほんと可愛いよな」
クスクス笑いながら、一緒にエレベーターに乗り込んだ。
ああ、なんかまた可愛いとか言われてるし。
オレ、基本は、部下だし後輩だし、兄貴の弟って事で弟みたいに思ってるみたいな事も言われたような気がするし。
絶対、なんというか……下に見られてて、可愛いとか思われてるんだろうなと……。たまに言うもんな、可愛いとか。
あぁ、なんかこういう駄々こねるみたいな事すると、益々年下キャラみたいな。……つか、オレ、可愛いとか思われたくないんだよなー、くそ。
オレ今まで、可愛いとか言われた事、あったっけ。
何だか悶々と考えながら、先輩の部屋の階に着き、一先輩の後ろをついて歩く。
――――……そーいや。
女と歩く時って、絶対オレ、前を歩いてた気がするけど。
まあここが先輩のマンションだから今のことは違うけど。
普通に歩いてても、結構先輩の後ろを歩くことが多いかも。
仕事だとついて歩いて教わる事が多かったから、なんとなく後ろを歩く癖が、ついてるんだよなぁ。
やっぱり、先輩とだと、オレは後輩モードで考えられることの方が多いんだろうなあ……。
(2022/4/13)
◇ ◇ ◇ ◇
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by悠里
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