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第201話◇可愛い。
先輩が部屋の鍵を開けて、オレを振り返りながらドアを開けた。
靴を脱いで、中に入っていく先輩。
くる、とオレを一度振り返って。
「ちょっとスーツだけかけてくる。入っててもいいよ」
「すぐならここで待ってます」
「うん。すぐ」
言いながら先輩が奥に消えていった。
どーしたら「可愛い」呼ばわりされなくなるかなあ……。
と、オレが「可愛い」からの脱却方法を考えてると、本当にすぐに先輩が戻って来た。
「おまたせ」
「いえ」
持ってきた会社用のバッグを玄関に置いて、靴を履いた先輩は。
「……三上、さっきから、変な顔してる」
言いながら、オレを見上げて、クスクス笑った。
「可愛いって言ったから?」
――――……バレてるし。
「……別に」
認めるのも悔しいし、バレバレなのに、違うと言うのもなんだかな。と思い、そう言って、視線を逸らしたら。
不意に先輩の手がオレの頬に掛かって、ぐい、とひかれて。
びっくりしてると、おもいきり、まっすぐ見上げられた。
でっかい瞳。凛としてて綺麗。
――――……今更だけど、ものすごい、ドキドキするとか。
……どんだけ好きなんだ、オレ。
なんてことを、思っていたら。
「いつもさ、三上ってカッコいいから、たまに可愛いとつい笑っちゃうって事なんだけど」
「――――……」
「……まあ、それでも、嫌なら言わないけど?」
ふ、と細められる瞳。
「オレ、いつも、いい意味でいってるんだけど……?」
「――――……」
――――……ダメだ。無理。
急にぎゅ、と抱き寄せたオレに、びっくりしてる瞳を見つめたまま。
唇を重ねた。
「……っ……ん……?」
舌を挿しこんで、先輩の舌と絡めて、すると、小さく声が漏れる。
――――……可愛い……。
つか、可愛いって、オレじゃないと思うんだけどな。
「――――……ん、ん……」
先輩の手が、オレの腕にかかって、そっと、引き離される。
「……三上、会社だから、すとっ…――――……」
「も少しだけ」
そう言って、先輩の頬に触れたら。
困ったように眉を寄せたけど。先輩は、すぐ、ふ、と瞳を伏せた。
ああもう可愛い――――……。
先輩とこうなってから、心の中で何回叫んでるか。
唇を重ねながら、また抱き寄せる。
しばらく、キスしてから。
ゆっくり離すと。
先輩はゆっくり瞳を開いて、オレを見つめた。
「――――……ごめんね、陽斗さん」
「……何で、謝ってんの?」
「これから会社なのに、こんなキスして」
ふ、と笑って、オレを見つめ返す。
「――――……まだ時間早いから」
言って、先輩はすぽ、とオレの腕に収まってきた。
「――――……ちょっと休憩してから行こ」
休憩。なんかそんな言葉すらも。
……可愛い。とか。
あー。もう。
すげー好き。
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