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第202話◇中高生?
午前中は、部の会議。
3月の期末までにやらなければいけない仕事の確認、4月の新人の人数や配置。
部長の話もあるし、各課長の話と情報共有すべきものの説明。
よほどの緊急事態でもなければ、基本月1のこれは全員出席。
課の皆と適当に話しながらこの会議室に入ったので、先輩は少し前の方の席に座った。まあいつもと隣同士に座る訳じゃない。……というか、今までこういうの、隣に座った事はない。くそ志樹のせいもあると思うけど。
部長の話を聞いてるふりで前を見ていれば、先輩の横顔がちょうど目に入る。良い席に座った、ラッキー。なんて咄嗟に思って。
何だかそんな感覚に、中高生の頃を思い出して、我ながら少し固まる。
――――……オレ考えてる事、結構やばいような。
さすがに、バレないようにしないと。
にしても。
可愛いなぁ、横顔。いや。綺麗、かな。
その時部長が、こないだの、先輩とオレの京都出張の話をし始めた。
担当相手が京都に行き、向こうで問題があったのに、相手の要求で京都まで出向くことになった事。まあ、そんな事もたまにはある。相手にもよるし、今後の関わり方や、業務の規模などによっては、ある程度の我儘を聞く事もある、みたいな話。全部を拒否っててもしょうがない、みたいな。
「渡瀬、ちょっと経緯、説明しろ」
「あ、はい」
先輩が急に名指しされて、立ち上がった。
結構な人数の中でいきなりだったのに、何ともない感じで立ち上がり、説明を始める。
起こった事態の説明と対処、要点をうまく掻い摘んで、説明を終えた。
部長は、まあこんなケースもあるってことだ。なんて言って、先輩に礼を言って、座らせている。
頭いいんだよな。
――――……説明も分かりやすいし。
会話も、いつもスムーズで、聞かれた事に的確に、最も分かりやすいと思うような感じで答える。
オレに冷たくしてた時だって、もうほんとに分かりやすくて。
ムカつくけど、すごいなと思ってたし。
先輩に憧れてる奴は。男にも女にも、居るんだろうけど。
――――……ずっと。
……オレので居てくんないかなあ……。
朝、毎月更新とか、あほな事言ったけど。
なんかほんと、どんな条件でも。
自分にできる限りは頑張るから。
――――……陽斗さんと、居れたらいいなあと、思ってしまう。
部長に、説明が分かりやすいと褒められて、先輩はちょっと照れたように笑んだ。
――――……何だかな。
照れたようには笑ったけど。
オレが抱き締めてる時に、めちゃくちゃ恥ずかしそうになってる、可愛い感じでは、全然ない。……って当たり前か。あそこですげー可愛くされても、マジで困るけど。
あの人が、オレの腕の中で、オレを見上げてくれる可愛い顔、とか。
普段本当に頭がいいと思うのに、オレと恋愛関係で話してると、何かものすごくすっとぼけた事言い出すとことか。
……あれは夢かなーと思ってしまう位、何だか今は、綺麗な涼しい顔してる。
と。
ふっと、先輩がこっちを見て。ばっちり視線が合った。
あ。視線、感じた? ずっと見てたのバレたか。
とっさに外せず、どうしようかなと思っていたら。
先輩は。
ふ、と口角を上げて、少し目を細めて、優しい顔で、微笑んで。
オレをひたすら固まらせて。
そのまま、また前を向いた。
「――――……っっっ」
がっくり、力抜けて、肘をついた姿勢でこめかみ抑えて、指でぐりぐりしていると。隣の奴に「どーした?」と聞かれて、「ちょっと頭痛」と一言。「ありゃ。大丈夫か?」と聞かれる。
うーん……。
……あんま大丈夫じゃねえような。
ほんと、笑顔位で、こんなときめいて、おかしくなるとか。
恋煩い中の中高生みてーで、マジで頭痛がしてきそう。
「――――……」
オレがまた視線を先輩に向けると、先輩は相変わらず涼しい顔して前を見てる。
座ってるだけでも、なんか、周りと一線画して、ほんと綺麗。
皆と同じような、ワイシャツ姿なのに。何だなんだ。マジで。
……さすがに、会社の奴に、「先輩が綺麗」について同意を求める訳にはいかねーから。
……今夜祥太郎に訴えてくるしかねーな。
…………マジで、そーしよ。
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