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第222話◇人生初
「――――……んん、ぅ、……ふ」
声。可愛い。なんか涙目で、必死に見上げてきてるし。
何なの。すげえ酔ってんのかな、これ。可愛い。
ぴくん、と震える手を、繫いでベッドに括りつける。
ぎゅ、と握り返してきて――――……そんなのだけで、死ぬほど可愛いとか。
「……っみ、か……み……ん……」
「――――……蒼生」
一瞬離してそう言って、また唇を塞ぐ。
「ん――――……あお、い……」
「――――……っ」
あー、もう……。
可愛いからずっと呼んでいて欲しいけど、そうするとキスできねーし。
……こんなの迷うの初めてだし……。
「……んっ、――――……あおい……」
少し息が出来る程度に離して、呼ばれたらまたキスで塞ぐ。
なんかめちゃくちゃ気持ち良くて。
舌、溶けあって、どっちのか分からなくなってるかのような、感覚。
「んン……」
喉の奥でくぐもる声。
会社で、皆の前で話したり、プレゼンしたり、指導してたりする先輩の声は、凛としてるし、ほんとにカッコいい。
なのになんでこんな可愛くなっちゃうんだろう。
「ふぁ……ん、っぅ……」
最初からだったけど、舌吸われるの、本当に弱いと思う。可愛い。
噛むと、びく、と体が震える。
漏れる息が熱くて。
「あおい……」
うわごとみたいではなくて、呼びかけられた気がして、キスを離して見つめると。
涙目で、見つめ返されて。
そのまま、ぎゅう、としがみつかれた。
「陽斗さん……?」
陽斗さんの後頭部に手を置いて、よしよしと撫でてると。
「――――……す、き……」
――――……。
――――……ん?
すき、て、言った? 今。聞いてもないのに、好き、て?
あーもう、時間遅いけど……もう、このまま触れて、抱いて――――……。
思った瞬間。
ぽとん、と、先輩の手が布団に落ちた。
え? ――――……。
まさか。と思いながら、先輩を見ると。
ふ、と瞳を閉じていて、かくん、と力が抜けていく。
「――――……」
あんまりな事態に、しばし呆然と見つめた後。
そー、と、枕に頭をしずめさせて。
……そのまましばらく、手を先輩の顔の横について、囲ったまま、じっと見つめる。
「――――……」
……寝てるし。
この盛り上がりすぎてる気持ちと、体の熱はどーしてくれるのかなあ。
……つか。
手を、下に這わせて、先輩のに触れると。ちょっと反応してるし。
「……んん……」
ちょっと嫌そうに眉を寄せて、体をよじって、そのまま、 横を向いて、寝てしまった。
「――――……」
ぷ、と。吹き出してしまった。
先輩の上から起き上がって、隣に座り直して、壁に背を付いた。
……こんな、体も心も盛り上がりすぎてんのに、放りだされたの、人生初かも。
もー、ほんと……。
やれやれなんだけど……。
思いながらも。すやすや寝息立ててるのが可愛くてならないとか。
苦笑いが浮かぶ。
……しょーがないなー……。
なんて思いながら、隣ですやすや寝てるその顔を見てると、顔が綻んでしまうのだけれど。
『すき』
目の前の、可愛い唇が。
発した言葉が、よみがえる。
「――――……っ」
――――……だめだ。これ。おさまんねー。
てことで。これまた人生初。
触りたい相手が同じベッドに居るのに、自分でするという。
意味不明な初体験をしてしまった。
(2022/6/8)
昨日別のお話でしたのですが……(笑
「蒼生くんがんばってー(笑)」て方、いらしたら、
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