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第二章 優しい言葉
雅貴と二人で素敵な夕食を終えた藍は、客室に戻ってメニューをもう一度眺めていた。
エメラルドグリーンに白の箔押しが施された、ディナーのメニューだ。
『白沢 藍さまのための ディナーメニュー』
この日この時のためだけに作られた、特別なメニューだ。
記念に持っていたい、と言うと、雅貴はわずかに微笑んでいた。
『こんなもの取っておいて、一体何にするんだ?』
でも、嬉しかったんだもの。
本当に、嬉しかったんだ。僕は。
もちろん、料理もおいしかった。
完熟桃とヨーグルトの冷たいスープ。
モッツァレラチーズと生ハム、フルーツトマトのサラダ。
エスカルゴときのこのフリカッセ。
ズワイガニとポテトのグラタン
へアフォード牛 フィレ肉のステーキ 赤ワインソース……。
名前も知らない料理がほとんどだったが、どれも素敵においしかった。
それらが、自分のことを第一に考えて組み立てられ、作られたものだということに、藍は素直に感動していた。
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