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第17話
やっぱりまだ裸を見せるのには抵抗があって、後ろを向こうとすると、腰を持たれ、身体をひっくり返されそうになる。
「ねえ、こっち向いて」
「い、嫌だっ!」
静は身体に力を入れて、抵抗した。
花村の部屋に連れてこられ、濃厚なキスを受ける中で、服は全て取り払われてしまっている。手際の良さに感心するふりをしたが、初めての行為に緊張していた。
それに花村は寝室の灯りをつけっぱなしにしているのだ。
「消せよ! 電気!」
「君のことを全て見たいから却下だよ」
「恥ずかしいから消せって……、んっ」
再びキスをされ、身体の力が抜ける。キスで誤魔化すな、と思ったものの、言えるはずもない。静は黙ってキスを受け入れた。
二人の身体は密着している。後ろを向いていたはずなのに、キスに気を取られているうちに、いつの間にか正面を向かされている。
これでは互いがどんな状態になっているかは誤魔化せないだろう。
(あ、ちゃんと勃起してる)
花村も静と同じく裸だ。花村自身がきちんと反応しているのを感じて、安心した。
しかし勃起した自身を花村に見られたくない。また身体を捻ろうとすると、体重をかけられ、わざと擦り付けられた。
「あ、だめ……、当たっちゃ……」
「わざと当ててる、大丈夫だから」
そう言うと、ちゅっと目元にキスを落とされる。
「このままでいて、静くんの顔も身体も全部好きだって証明してあげるから」
どういうことだ、何をされるんだ、と思い、身体を強張らせるが、その強張りをほぐすように何度もキスが顔に降ってきた。唇は首筋、鎖骨、胸元、腹へと降りていく。
くすぐったいような、気持ちいいような感覚だ。合間に大丈夫だよ、と言われ、優しく食まれたり、身体を撫でられたりすると、自然と安心感を覚え、静はリラックスしていく。
気持ちいい。もっと触っててほしい。
「んんぅ……」
へそを舐められた際、勃起している静自身に指で触れられた。何をしようとしているかなんて、聞かなくてもわかる。
「大丈夫、気持ちいいだけだから」
それでも不安そうな目で見ると、足の間で花村が笑っていた。
「わ、わかった……」
静も覚悟を決める。いつまでも過去のことを気にしているわけにはいかない。
そろそろと足を開き、花村がやりやすいように位置を調整した。
(し、死ぬほど恥ずかしい……っ! けど、花村のこと、信じたいし……)
「ありがとう、舐めるよ」
「ぅん……、っ、う、ぁあっ」
花村の口の中に自身が含まれていく。流石にその場面は見ていられない。静はベッドに背を倒し、目をきつく瞑った。
口淫されたのは初めてだ。ねっとりと吸い上げられたり、舌で忙しなく舐めしゃぶられたり、快感で腰が浮いてしまう。
まだ口淫をされて少ししか時間も経っていないのにもう射精しそうだ。だが流石に口の中へ射精するのはマナー違反だろう。
懸命に堪えていると、口が離され、声を掛けられる。
「後ろも触るよ」
「待っ……、ぃあ、あぁ、だめだって……ぇっ、ふぁあっ」
今、後ろにまで触れられたら、我慢できなくなってしまう。
しかし待て、という言葉が口から出る前に滑った指が後孔へと含まされた。
「あ、あぁっ、だめっ、いくから、あぁっ!」
口の動きと指の動きが連動していて、否応なく快感は高まっていく。水音は激しくなっていき、ついに熱く弾けた。
「くぅう、ぁあっ」
静は花村の口の中へ射精してしまった。身体に力が入り、後孔の指もきつく締め付け、絶頂に達する。何度かに分けて射精した精を花村は全て飲み込んだようだ。
謝ればいいのか、罵倒すれば良いのか、頭が回らない。
射精の影響でぼうっとしているものの、花村は休ませてはくれなかった。
「わっ、ちょっ!」
「すまない、余裕がなくなった」
指を引き抜かれたかと思うと、膝の裏を持たれ、足を広げられる。
「挿れるよ」
静の返事は聞かれなかった。熱く猛った花村自身が静の中へと挿入される。
「っ!」
息が詰まる。圧迫感で声が出ず、上手く空気を取り込めない。
しかし、余裕がない、と言った割には、挿入は時間をかけてゆっくりと行われた。
「ひ、ぅ、くぅ、ふうぅ……」
「くっ」
ゆっくりと最奥を目指して、花村自身が進んでくる。
大きくて、熱くて、固い。圧迫感もあり、痛みもある。しかしこの痛みは静が花村に顔ではなく、身体も心も全て愛されているという何よりの証拠だ。
「あ、嬉し……っ、んっ」
唇を塞がれ、キスに応えていると、律動が始まる。足を腰に絡ませると、中の花村自身が大きくなった。それが嬉しくて、今度は自分から身体を押し付けた。
「あ、あぁっ、花村っ……」
「あ、ま、つ、ぐ、二人きりのときは天嗣って呼んでくれるかい?」
「んっ、あ、天嗣……」
「ありがとう静」
呼び捨てにされてしまった。普段はくん付けなのに。それだけでも得も言われぬ興奮に背中がゾクゾクとしてきた。
律動が再開される。二人は名前を呼び合い、互いを求める。
心を通わせ、身体をつなげることがこんなにも気持ちよくて、幸せであることを静は初めて知った。
花村の愛に応えて後悔はない。過去に囚われず、一歩踏み出して良かった、と泣きそうになる。
二人での絶頂の瞬間が近づいている。静は花村をきつく抱きしめ、この暖かさを二度と離したくはない、と思った。
終
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