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一通り片付けが済むと、化学モップで棚の埃を掃った。
シェルフの上のデジタルフォトフレームの中で、画像がゆっくり切り替わり、懐かしい写真が何枚も現れては消えた。
汀のものだけ飾ればいいのに、上沢にある清正の実家で撮った古い写真もスライドリストに加えられていた。
十年前、あるいはもう少し古いかもしれない。
四角いフレームの内側に、今とほとんど変わらない姿をした光と、今よりずっと少年らしい面影を残した清正の顔が映し出される。
庭の薔薇が背景を埋めていた。
清正の家の小さな庭。
光が初めて清正と会ったのは、中学二年の夏休みだ。
東京郊外のベッドタウン、T市の上沢という場所で光は育った。
都心のA駅から急行で三十分。便利なわりに長閑で、開発の余地を残した空の広い土地だった。
大きな工場の跡地があり、そこに大規模な開発が入り、たくさんの分譲住宅が建ち始めた頃だった。
光の両親が手掛けた地区もあり、区画の整った街並みの美しさに魅かれて、光はよく自転車に乗って新しい街を見に行った。
若い街路樹ばかりの並木の下を、まだらに差す日差しを浴びながら走った。
きょろきょろとよそ見をしていた光は、引っ越し業者の置いた段ボールにぶつかって、自転車ごと勢いよく転んだ。
それを助け起こしたのが清正だった。
その日、清正は新しい家に引っ越してきたところだった。
差し出された手を見て、それから顔を上げてその手の主を見た。
ずいぶん綺麗な顔立ちの少年だと思った。
派手過ぎず地味過ぎない整ったパーツがすっきりとした輪郭の中に正しく配置されている。
右の唇の端だけがほんの少し上がっていて、それが完璧過ぎる顔に有機的な美しさを与えていた。
少年から大人になりかけの、幼さの残る表情の中に、魅力的な青年の顔がすでに現れ始めていた。
まだ子どもだった。
そして、相手は同性だとはっきり認識していた。それなのに、光の心臓はドキドキと鼓動を速めた。
その一方で、この少年は、きっととんでもなくいい男になるのだろうなと、不思議と冷静な考えが頭に浮かんでいた。
驚いたように光を見ていた深く黒い瞳を今も覚えている。
当時から背が高かったので、最初は年上だと思っていた。けれど、夏休みが終わると彼は光のクラスに転校してきた。
七原清正という名前を知ったのは、その時だ。
光と目が合うと、清正はひどく嬉しそうに笑った。その瞬間から、清正は光にとってかけがえのない存在になっていったのである。
頭がよくて、スポーツが万能で、性格も明るい。
すらりとした長身で、顔は芸能人並みに整っている。転校生というハンデをものともせず、清正はすぐにクラスの人気者になった。
まわりにいくらでも人が集まってきたのに、清正はなぜか、当時すでに「変わった子」認定を受けていた光を一番の友だちとして扱った。
そんなことに優越感を覚える性格ではなかったが、単純に、いつも清正が近くにいることが光は嬉しかった。
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