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 謎過ぎると言われた光の行動が示す意味を、清正は正しく理解した。  蜘蛛の巣に雨が光るのをずっと眺めていて授業に遅れる時、清正も一緒に遅れた。  同じ大きさと色合いのものを選んでドングリを拾う光に、自分の拾ったドングリを差し出し、光がダメだと首を振っても清正は怒らなかった。  理由を聞き、理解し、光の望むものを探して一緒に拾い始めるのだった。  中二にもなって、緑地公園の林の中で延々とドングリを拾い続ける光を、清正は蔑まなかった。  同じことをして日が暮れるまでそばにいた。  初めて知る不思議な安心感の中で、光は清正を信じた。  光は自分から、自分の行動の意味を理解してもらう努力をするようになった。清正の望むことを理解する努力もした。  超絶マイペース人間だった光が、清正に対してだけは破格の社会性を発揮したのである。  清正を通して、光は世界とつながることを覚えた。  人付き合いが苦手で、誤解されても気にしない。自分の心のまま、好きなように行動する。  そんな光がたいしたいじめにも遭わずにやってこられたのは、人に好まれる容姿をしていたことや、学校の成績がよかったこと、家が裕福だったことも理由としてあったかもしれない。  けれど、やはり一番は、清正がそばにいてくれたからだと思う。  一人で黙々と、常に何かを作っている光の隣に、いつも清正はいた。    女子に揶揄われながらレースを編んだり、細かい刺繍を布に施したり、あるいは休み時間のたびに木工室に通って木材を加工したりする光の横に、清正はいた。  やたらと何本も細い針金を捻じ曲げていた時も、冬の枯れたつる草をひたすら刈っていた時も、いつも面白そうに興味を持ってそれらを眺め、そして、どこか光を守るように隣にいてくれた。  光はよくトラブルを起こしたが、そんな時に力を貸してくれたのも清正だった。  変わり者だと揶揄われても一向に気にならなかったが、作ったものを壊されたり故意に汚されたりすると、光はとたんに悲しくなった。  乏しいコミュニケーション能力でその悲しみを伝えることは難しく、少ない語彙の中から強い言葉が零れ落ちた。    「殺す」と言う言葉はひどいものだ。  けれど、ほかに自分の苦しみを表す言い方を知らなかった。    光がその言葉を口にする度に、何があったのか清正は根気よく耳を傾けた。  お節介だと責められるのも気にせず、相手との間に入って光の代わりに事情を説明してくれた。  自分の中にある悲しみや怒りを、たどたどしい言葉ででも清正に言えば、それだけでも光は少し楽になれた。  その先に清正が立って、理解されないだろうと諦めていた相手に理解されたことを知ると、そこでもまた、世界を信じられるようになっていった。  無口なくせに好き嫌いがはっきりしていて、傷つきやすいのにうまくそれを伝えられず、黒く渦巻く感情を胸の裡に溜め込む。  かなり面倒くさい性格の光を、清正はそのまま受け入れた。  光は清正に依存し、清正はそれを許した。

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