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【6】-1
電気代が引き落とされないということは、光の通帳に残高がないということだ。
放っておくとガスや水道も止まる。
固定電話とネット環境、スマホの引き落としはクレジット払いだったのでまだ生きているが、このままではカードの決済も危うくなる。
週末、聡子のいない上沢の家のリビングで、清正に尻を叩かれ、一緒にノートパソコンを睨んでいた。
汀は朝からこの家の近くの幼稚園に行っている。
聡子が体験保育を申し込んでいたのだ。入園予定がなくても一日遊ばせて構わないらしい。
汀を送っていった後で、清正は光の通帳残高を確認すると言い出したのだった。
「暗証番号教えろ」
「8948」
一瞬、清正の指が止まった。
それからひどくゆっくり、その数字を打ち込んだ。
「汀、大丈夫かなぁ」
「汀は大丈夫だ。それより、おまえのほうが問題だ。残高がほとんどないじゃないか」
「え、マジ?」
画面を見ると、電気代以外の引き落としは新しい入金のおかげで辛うじてできていた。だが、残高の欄に記された数字には、カンマが一つもなかった。
つまり数百円単位。
「何に使ったんだろう」
「何に、じゃないだろ。ふだんから適当に外食で済ませて、必要なものをほいほい買って、仕事の依頼があってもなくても気にしないでいたら、金はどんどん減るんだよ。いい加減、学習しろよ」
しばらく順調に回っていたので油断していたが、独立して試作品の支払いも自腹になったので出費が激増していたらしい。
薔薇企画からの受注がなくなっていたことも大きかった。入金が一気に減り、それと連動して残高がみるみる減っていく様子が、数字を見ると一目瞭然だった。
「どんぶり勘定も、ここまで来ると悲劇だな。帳簿とか、どうしてるんだよ」
「領収証は取ってある……」
「つけてないのか? 独立したのって去年の四月だろ? 十二月までの収支を三月に確定申告するんじゃないのか。どうするんだよ」
「え。そんなの知らないよ」
知らないでは済まないのだと清正は頭を抱えた。フリーでやる仕事の帳簿など、清正にもわからないと言い、わからないが、かなりまずい状況であることは確かだと言って唸った。
「社長に聞いてみる」
ぼそりと呟くと、清正が顔を上げた。目が怖い。
「あの堂上って男、おまえの何なんだ?」
「何って?」
「元の勤務先の社長にしては、今も会ってるみたいじゃないか。まだつながりがあるのか」
「あるよ。だって……」
「だってなんだよ。どういうつながりだ」
うーん、と考えて「パトロン的な?」と答える。清正の目が殺気立つ。
「パトロン?」
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