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【6】-3

 一緒にいる間の理由がほしいとか、期間を決めてとか、悩んでいたことさえ恥ずかしくなる。  結局、光は清正がいなくてはまともに生活ができないのだ。  急に一緒に住みたがっている理由はよくわからないけれど、光が頼れる相手はどのみち清正しかいなかった。  遠くにいる親や、結婚している姉よりも、清正に甘えるほうがはるかに現実的なのだ。 「俺って、清正に依存してるよな……」  しゅんとうなだれて呟くと、「今さらだろう」と笑われた。 「その代わりと言ったらアレだけど、しばらくの間、汀の迎えを頼めると助かる」 「うん。それなら、喜んでやる」  仕事を与えられて少しほっとする。  ふと、いっそこの家にいたらどうだろうと思い付いた。  聡子は、一、二週間は戻らないと言っていた。その間、家と庭の管理をしながら、ここにいればいいのではないか。 「清正。どうせなら、ここで留守番するのってどう?」 「うちで?」 「うん。俺、庭の水やり、引き受けたんだ」  それに、と正直な言葉が出てくる。 「ずっといるんだと、清正のマンション、ちょっと狭いし。ほかにも持ってきたい画材や道具があるんだ。ここの和室を作業場に使わせてもらえたら、そこで仕事できるし……」  首を傾げた清正に「汀の送り迎えは俺がやるから」と付け加えた。考えれば考えるほど、それはいい方法のように思えてくる。 「じゃあ、しばらくそうするか」  清正が頷き、光の顔がぱっと輝く。それを見て清正も笑った。 「俺としては、とにかく光を一人で置いとくのが嫌なだけだ。光がそれでいいならそうしよう」  そうと決まれば、早速荷物を運ぼうと言い出す。やけに張り切っているなと思ったが、善は急げだと言われて頷いた。  時間を確認して、汀を迎えに行くために二人で家を出た。  体験保育をしている上沢幼稚園は、清正の実家から歩いて五分ほどのところにあった。駅と同じ方向にあるので、何度か前を通ったことがある。  広い園庭にゆったりと遊具が設置され、のびのびとした雰囲気の中、小さな子どもたちが思い思いに遊んでいるのを見かけた。  新しくはないけれど、手入れの行き届いた平屋建ての建物が広い庭の北側に建っている。アニメの絵柄などを使わずに、明るい塗装で仕上げた品のいいデザインを光は気に入っていた。  藤棚の下には大きな砂場もあった。  清正と二人で迎えに行くと、汀は園庭でボールを手にして何かをじっと見ていた。  視線の先を追うと、母親に手を引かれて帰る子どもたちの姿がある。  じっと立ったまま動かない小さな背中を見ているうちに、光は少し切なくなった。  汀は、まだ三歳だ。  やはり、母親が恋しいのだろうか。

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