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【23】ー2

『Under the Rose』  そのタイトルの受賞作がホームに設置されたネットニュースの液晶に表示された瞬間、清正は階段を駆け上がっていたそうだ。  光の手を掴んで下り電車に駆け込むと、ずっとその手を離さないまま、十分間のどかな振動とともに走る電車に揺られた。  さらに十分の道のりを速足で歩いて上沢の家の門をくぐる。    玄関に入ると、ドアが閉まり切るのと同時に光にキスをした。 「光……」  一度だけ離れて光の名を呼び、後は何度も何度も角度を変え、光の舌を甘く吸い上げた。  わけがわからないまま、光は清正の首に腕を回して、夢中でそれに応えた。  言葉で伝えることはできなくても、何かが清正に届いたのだと思った。  同時に、どんなに深く口づけられても、足りないようなもどかしさを覚えた。  もっと、清正の近くに行きたい。  しっかりと抱きしめられて、深いキスを交わしていても、もっと、と、足りない、と感じた。  清正が欲しい。  身体の全部で溶け合いたい。  そう強く願った。 「清正……」  キスの合間に、名前を呼ぶことしかできない。  願いが届かないもどかしさが苦しい。  口づけを解くことなくリビングを抜け、脱いだ服をそこらじゅうに落としながら、階段を上がってゆく。  聡子の寝室だった広い部屋で、汀と清正のダブルベッドに押し倒される。その頃には、どちらも下着と靴下しか身に着けていなかった。  清正が光の靴下を奪い去り、光は清正の右足だけ脱がせた。  下着はまだ着けていた。  それがむしろいやらしく思える状態で、それぞれの欲望が布を押し上げていた。    苦しそうに膨らんだ場所を重ねて擦り合わせる。上部から互いの先端が現れ、敏感な部分だけが直に触れ合った。  堪えきれずに甘い声が零れた。 「あ、あ……」 「光……、ん……」  腰を押し付け合って猛るものを合わせる。  互いの下着に手をかけて下ろし、切羽詰まったように飛び出してきたものをぶつけ合う。  重ねて指で包むと、どの指がどちらの指かもわからない刺激に、腰の奥でマグマのような熱が沸き上がった。 「あ、ああ……」  蜜を滲ませた先端をゆるゆると擦り合わせながら、清正は光のものだけを指で摘まみ、「舐めさせて」と囁いた。  こんなふうに、と示すように口の中に差し入れた舌で、光の舌を包み込む。  周囲をゆっくり舐められて、あんなところにこんなことをされたら、気持ちよくて死んでしまうと思った。  そう思ったのに、光は望みを口にしていた。 「……して。清正……」  ゆっくりと唇が身体を下ってゆく。

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