113 / 119
【23】ー2
『Under the Rose』
そのタイトルの受賞作がホームに設置されたネットニュースの液晶に表示された瞬間、清正は階段を駆け上がっていたそうだ。
光の手を掴んで下り電車に駆け込むと、ずっとその手を離さないまま、十分間のどかな振動とともに走る電車に揺られた。
さらに十分の道のりを速足で歩いて上沢の家の門をくぐる。
玄関に入ると、ドアが閉まり切るのと同時に光にキスをした。
「光……」
一度だけ離れて光の名を呼び、後は何度も何度も角度を変え、光の舌を甘く吸い上げた。
わけがわからないまま、光は清正の首に腕を回して、夢中でそれに応えた。
言葉で伝えることはできなくても、何かが清正に届いたのだと思った。
同時に、どんなに深く口づけられても、足りないようなもどかしさを覚えた。
もっと、清正の近くに行きたい。
しっかりと抱きしめられて、深いキスを交わしていても、もっと、と、足りない、と感じた。
清正が欲しい。
身体の全部で溶け合いたい。
そう強く願った。
「清正……」
キスの合間に、名前を呼ぶことしかできない。
願いが届かないもどかしさが苦しい。
口づけを解くことなくリビングを抜け、脱いだ服をそこらじゅうに落としながら、階段を上がってゆく。
聡子の寝室だった広い部屋で、汀と清正のダブルベッドに押し倒される。その頃には、どちらも下着と靴下しか身に着けていなかった。
清正が光の靴下を奪い去り、光は清正の右足だけ脱がせた。
下着はまだ着けていた。
それがむしろいやらしく思える状態で、それぞれの欲望が布を押し上げていた。
苦しそうに膨らんだ場所を重ねて擦り合わせる。上部から互いの先端が現れ、敏感な部分だけが直に触れ合った。
堪えきれずに甘い声が零れた。
「あ、あ……」
「光……、ん……」
腰を押し付け合って猛るものを合わせる。
互いの下着に手をかけて下ろし、切羽詰まったように飛び出してきたものをぶつけ合う。
重ねて指で包むと、どの指がどちらの指かもわからない刺激に、腰の奥でマグマのような熱が沸き上がった。
「あ、ああ……」
蜜を滲ませた先端をゆるゆると擦り合わせながら、清正は光のものだけを指で摘まみ、「舐めさせて」と囁いた。
こんなふうに、と示すように口の中に差し入れた舌で、光の舌を包み込む。
周囲をゆっくり舐められて、あんなところにこんなことをされたら、気持ちよくて死んでしまうと思った。
そう思ったのに、光は望みを口にしていた。
「……して。清正……」
ゆっくりと唇が身体を下ってゆく。
ともだちにシェアしよう!