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第34話
ぼーっとした頭で天井を眺める。ああ、綺麗だなぁ。こう、なんか、キラキラしたやつが、キラキラしてて、綺麗だ。隣で寝てる小焼も綺麗だ。
近くのホテルに入って、部屋に入った瞬間にキスして、あとはこう、流れのままヤッて……。
いつも「3回まで」と言われてるから、今日こそはきちんと守ろうと思ったけど……、うん、破っちまったな! 体を起こして周りに放置されたままの使用済みゴムを集める。えーっと、5回してる……。いや、5回以上やったような気がする。だって、ゴム無しでしちまったもん……。しかもそんままおれは力尽きてたから……、そーっと小焼の脚を掴んで開いてみる。後始末して……ないな? すごいエロい。洗浄してやったほうが良いよな? でも寝てるの起こしたら絶対怒る。だけど、前に腹が痛いって言ってたから、やっぱり洗ったほうが……。ええい、どうにでもなれー!
「っ、あ、なに?」
「後始末! 後始末すっから!」
「アッ! ひ、あ、アア」
わかってたけど、甘い声で鳴くからまたしたくなってきた。もうこれ以上したら駄目ってのは頭ではよくわかってんのに、したい。どうせ怒られるのは一緒だし……、もう開き直って良いか。
素早くローションを取って、自分の宝剣に塗りつけて、そのまま小焼の中にお邪魔する。熱くうねって、おれをしめつけてくる。入れてるだけでもイッちまいそうだ。もう何回もイッた後だけど、まだしたい。もっとしたい。もっともっと。小焼と繋がってたい。
小焼は起きたばかりでまだ頭が回っていないから、素直に喘いでくれてる。いつもなら声我慢して布団に埋もれたり枕噛んでるのに、現在、とっても喘いでる。
おれよりも立派な体してるのに、ところてんみたいにとろけちまってる。すっごいエロい。小焼の体がやわらかいから、向かい合わせに抱き合う体位も簡単にできる。手を繋ぐ。指輪がキラキラ光ってる。幸せだ。すっごい幸せ!
繋いでた手が外れて、小焼はおれの背中に腕を回す。ぎゅっと抱き締められて苦しいけど、気持ちいい。おっぱいに埋まって呼吸も苦しい。
「にゃっ、つきっ! いっ、あ、おくっ、ああ!」
「ん。奥な。わかった」
もっと深くを突いて欲しいってことだと思う。そう言ってないとしても、言ったことにする。小焼は前立腺だけじゃなくて、奥でもけっこう感じてくれる。もしかして自分で開発しちまったのかな? って思うくらいだ。
おれのためにプラグ入れて、アナルセックスできるようにしてくれたし、素直で真面目で、最高の恋人だ。
「にゃっ、すき、ら、ァッ! イッ、ああ、ああッ!」
「え、好きって言った!? あ痛だぁああああ!」
肩に噛みつかれた。同時に、ぎゅっとしめつけられて、おれは小焼の中に思いっきり出した。中出しって……、クセになると思う。あと、この後のお怒りを考えたら死にそう。
ふかふかのおっぱいに埋もれて呼吸を整えてたら、頭をベシッと叩かれた。痛い。
「何回する気ですか」
「ごめん……。おれ、我慢できなくて……」
体を起こす。おれの腹に小焼の精液がどろっとついていた。これはこれですごいエロい。
小焼の説教を聞きながら、丁寧に身体を清めてやる。怒ってるんだけど、声はまだ優しい。もう少し加減しろだの我慢しろだの言われ続ける。おれだって、もうちょっと我慢できると思ったんだって! できなかったけど! 言えないけど!
ある程度清められたら、シャワールームに移動。ここでもっかいセックスしたいとか思っても、できるわけがない。下手したら風呂で溺死だ。
洗い合いっこという平和でガキっぽいことをして、シャワールームを出る。ドライヤーで髪を乾かしている小焼がとても綺麗だ。いつでも綺麗なんだけど、濡れた髪を乾かす瞬間に謎の神々しさを感じちまう。
服を着て、ソファに並んで座る。ベッドは……掃除の人が頑張ってくれるだろ!
「お前はどうしていつも我慢できないんですか?」
「ごめん……。小焼のこと好きだから、つい暴走しちまうんだ」
「はぁ」
小焼はため息を吐きながらおれの頭を撫でる。頭を撫でられるのは好きだ。もっと撫でてほしいって、擦りついたら頬を両手で包まれて、わしゃわしゃされた。まるで犬の顔をくしゃくしゃするかのようにされた。それからキスしてくれた。
「えへへ、嬉しい!」
「……夏樹って何しても嬉しがるんですか?」
「そういうわけじゃねぇけど、小焼がおれにかまってくれるだけで嬉しいぞ」
「何ですかそれ」
他人に興味の無いやつが、おれにだけ興味をもってくれるのが嬉しい。
一年前だと考えられないくらい幸せだ。小焼と恋人になれるとも思ってなかったし、リングまで渡せると思えなかったし、幸せ。
「おれ、今、すごい幸せ!」
「はぁ? まあ、幸せなら良いと思いますよ。夏樹が楽しそうなら私も楽しいので……それなりに」
「ほんとか!?」
「やかましいので声のボリューム下げてくださいよ」
ここでアラームが鳴る。今日は宿泊じゃなくて休憩にしていたから、あっという間に時間が過ぎてた。延長は――……しないっぽいな。小焼はカバンを持っていた。
支払いを済ませて、部屋を出る。他の部屋から男女のカップルが出てきて、おれらを見て驚いた顔をした後、ひそひそ話していた。
……なんだか嫌だな。せっかく幸せな気分だったのに、ちょっと悲しくなった。そりゃ同性カップルはまだ珍しいと思うけど、明らかに嫌そうな顔しなくても良いだろ。
小焼を見る。爪を噛んでたから、おれは慌ててその手を掴んで下ろしてやった。不機嫌ってことがわかりやすいんだけど、ここで喧嘩になって殴りでもしたら今後が面倒なことになるから、小焼の手を掴んで握っておく。
「なんだか腹が立ちませんか」
「気持ちはわかっけど、抑えてくれ。殴ったら捕まっちまうから」
「犬の糞でも踏めば良いのに」
地味に嫌なことを願うあたり、小焼の根がとてもイイコだとわかる。命の危険は及ばないけど、犬の糞を踏んだらテンション下がるよな。
ホテルを出て、地元に向かって移動。
まだ実感は無いけど、左手の指輪を見たら、おれと小焼は確かに婚約してんだなぁって感じる。ブライダルって言うと、どっかで結婚式でも挙げたい。籍は入れられなくても、式ぐらいはしたいな。あと、新婚旅行にも行きたい
「なあ小焼、結婚式やりたい」
「良いですよ」
意外と返事は乗り気だ。こういうの嫌がるかと思ってたんだけど、声色が優しいし、繋いだまんまの手をぎゅっと握ってくれた。
「私も、夏樹のウェディングドレス姿を見たいと思っていたところです」
「ん?」
「母に頼んでおいたので、そのうちデザインがあがってくるかと」
「へ?」
「教会もおさえてくれるでしょうし、連絡を待ちましょう」
「お、おう……」
あれ? おれ、ウェディングドレス着るの? おれが? あれ? なんか、おかしくねぇ? でもまあ、小焼がおれのドレス姿を見たいって思ってくれてっから、良いよな。うん、良いってことにしよう。
「夏樹、『サイド』」
「おう。言われなくても横にいるよ。おまえの側にいっから」
手をぎゅっと握ったら、更に力強く握り返された。
おまえが側にいて良いって言うなら、おれ、ずっと側にいるから。言われなくても、側にいっから。本当は寂しがり屋で優しいやつだって、おれはわかってっからな。
完(食)
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