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第1話

6月中旬。 梅雨で燻る天気が続いていたが、今日の空は晴れやかに澄み渡っている。 真上に登った太陽は、賑やかな住宅街の中に佇む小さな教会へも、惜しみなくその光を注いでいた。 小さな教会では今、一組の新郎新婦--いや、新郎新夫が白いタキシードに身を包んで静かに神父からの祝福を受けていた。 本人たちは勿論のこと、参列した家族や友人たちも皆一様に彼らの結婚をとても喜んでいる。 「.....彼らに未来永劫祝福があらんことを」 神父である僕は最後にそう締めくくった。 自然と顔には笑みが浮かび上がる。 だって僕も皆と同じように胸に喜びが溢れているから。 --そう、心の底からの悦びが。 「っ、あっ.....真人さんっ...、だめっ、服汚しちゃうっ」 「ん?そうか、今日は俺たちの晴れ舞台だもんな。服を汚したら大変だ。なんならここを縛ってしまおうか」 もうすぐ始まる結婚式。 会場には続々と人が集まる中、新郎新夫の控え室には淫猥な空気が漂っていた。 新夫の華奢なタキシード姿に欲望をたぎらせた新郎が悪戯を仕掛けているのだ。 新夫のズボンは脱がされているものの、このままイってしまえば、自分の上着と相手の真新しいタキシードを汚してしまうと危惧した新夫は必死に自身のモノを手で握り縛めている。 その姿に堪らなくなった新郎はもっともっと新夫を追い詰めぐずぐずにしてやりたくなった。 新夫のモノに結婚指輪と同じデザインの、だけどそれより少し大きめのリングを嵌めてやる。 「俺からの指輪、ここでも受けとってくれるよな?勿論結婚式の間、ちゃんと肌身はなさず付けていて欲しい」 「あっ...ぁ.....でもっ.....」 新郎からの熱い眼差しに、酷い仕打ちを受けているはずなのだが新夫ははっきりと拒絶が出来ない。 「ほら、もう式が始まる。行こう」 新夫が戸惑っている間にズボンを履かせ、新郎新夫は手を繋ぎ会場に入場していく。 なすすべもなく新郎に手を引かれるまま会場へと足を踏み入れた新夫は、快感に耐えているため顔が火照り頬が赤く色付いていて--。 「.....ぃ、.....おいっ、ユキ!」 真横から聞こえてきた声にはっ、として我にかえる。 先程まで自分の目の前にいたはずの新郎新夫はもういない。 「リオン、彼らは?というより式は?」 「もうとっくに式は終わった。彼らも今頃は披露宴で友人たちと盛り上がっている頃だろう」 リオンは呆れた様子で溜め息をつく。 でも、同時に僕はリオンよりも大きな溜め息を吐いていた。 何故なら-- 「もー、ほんとリオンは分かってないよね。式が終わったんなら、彼らは今、2人きりで放置プレイ後のイチャイチャえっち中に決まってるでしょ!」 リオンの瞳の中には目をキラキラさせながらグッとポーズをするユキ--本名結希が写りこんでいる。 一方に結希の瞳には呆れを通り越して哀れな者を見るような目をしたリオンが写っていた。 「お前のそれ、どうにかならないのか。.....いや、どうにかなる訳がなかったな。お前は自分の妄想の為に神父になったようなものなのだから」 .....否定は出来ない。 でも、僕が神父になった理由は何もそれだけじゃない。 15年来の付き合いの癖に酷い言い様だ、と僕は思った。

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