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第4話
神父になって早2年。
未だに新郎新夫で妄想は繰り返すものの、それ以外は心から神に使え仕事をこなしている僕に、神父とは何かをリオンが説くことはなくなった。
ただ、今日のように妄想に没頭し過ぎると流石に白けた目を向けてはくるが。
当初僕はリオンと共にいることに必死になっていた。
でも、リオンと一緒にいられることが半ば当たり前になってきた今、贅沢な願いが出来てしまった。
--リオンの心を自分にだけ向かせたい。
リオンは教会を訪れる皆の祝福を心から願っている。
リオンにしてみれば当たり前のことをしているに過ぎないのだろうが、リオンにそこまで心を砕かせる皆々に、要は嫉妬をしてしまうのだ。
--僕もリオンに祝福されてみたいなあ。
その時だけは僕のことだけを真剣に考えてくれるってことだもんね。
「ユキ、何を悩んでるんだ。俺には言えないことか?お前は余計な妄想は嫌というほど口にするが、本当に言いたいことは我慢する癖がある。出会った頃からな」
久しぶりに呆れた顔以外を向けられる。
少し困ったような、心配そうな顔。
更に僕の頭を撫でてくれる。
滅多にないその優しさに、少しだけ気持ちを吐露してみた。
「.....リオンに祝福されてみたいな、と思って」
予想していなかった内容だったのだろう。
驚いた表情を僕に向ける。
「それはユキが誰かと結婚式を挙げた時の話か?」
「誰かじゃなくて、リオンと今此処で結婚式を挙げて、それを祝福して貰いたい。リオンに」
暫く沈黙していたリオンだったが、小さくくすりと笑う。
「自分の結婚式を挙げて自分で祝福するとは何とも笑える話だな」
「大丈夫。リオンには僕が祝福を授けるから。だからリオンは僕に祝福を授けてくれる?.....だって仕方がないじゃん。結婚相手がいないんだし。代理、やってくれるよね?」
--最後の最後でまた本音を隠してしまった。
代理なんかじゃない、本当にリオンと結婚して、それをリオン自身に1番祝福して貰いたいのに.....。
「ユキは可笑しな奴だな。相手がいないなら祝福する意味もないだろ。本末転倒だ。.....だが、たまにはお前の酔狂に付き合ってやるのも良いだろう」
承諾はしてくれたものの、「何でユキは俺に祝福されたいんだ?」と、小声でぶつぶつ独り言を言っているリオンを急かし、教壇の前に二人で向き合う。
「じゃ、僕からね。.....汝、リーオンベルグは病める時も健やかなるときも結希を支え、愛し続けることを誓いますか?」
「誓います。汝、信藤 結希は病める時も健やかなる時もりーオンベルグを支え、愛し続けることを誓いますか?」
「当たり前です!誓います!!」
「おい、張り切りすぎだ」
リオンがデコピンをかましてくるが、それも嬉しくて笑ってしまう。
「ユキ、お前変態度増したか?」
「.....まあ、笑顔は可愛くないこともないが」と続けられた言葉は小さく、残念ながら結希には聞こえていなかった。
「そんなことどうでも良いから続き続き!.....リオンに未来永劫祝福があらんことを」
「そう急かすな、分かっている。.....ユキに未来永劫祝福があらんことを」
--ああ、なんだろうこの気持ちは。
胸の中から幸せがどんどん生まれて来て、身体におさまりきらず溢れて行く。
リオン、待っててね。
何時か絶対に僕の気持ちを伝えるから。
僕の方だけ向かせてみせるから。
そして.....僕だけの神様にしてみせるから。
--リオン、愛してる。
様々な気持ちを込めて、目の前にいるリオンの唇にそっと自分の唇を触れさせたのだった。
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