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ついにこの日が
ぽかぽか陽気が気持ちいい5月の土曜日。BGM代わりに点けっぱなしのテレビ番組も、ゴールデンウィーク中の週末なのもあってか、グルメ特集やレジャー特集などが多かった。
そんな中、慎弥は朝からせっせと部屋の掃除をしていた。もともと綺麗好きな方なので、普段から部屋は小綺麗に保っていたが、今日はなんとなく浮つく気持ちもあっていつもよりもこまめに動き回っていた。
キッチンのシンクを念入りに擦っていると。慎弥の携帯がメールの着信を知らせた。掃除の手を止めて、メールを確認する。
『今日、3時ぐらいには行けそう』
須藤からのメールだった。慎弥は嬉しくなって速攻で返事をした。
『分かった。待ってる』
そう。ついにこの日が来たのだった。須藤と付き合い出して約半年。先週末にシーズン最後の試合が終わった次の週末。やっと、須藤と『ゆっくり』会えることになったのだ。
シーズン中はトレーニングと試合でほぼ休みなしの須藤と、週末も頻繁に仕事が入る地方公務員の慎弥とのスケジュールがなかなか合わず、いつも数時間の逢瀬だけしか叶わなかった。
その結果、付き合い出したのはいいものの、キスとかちょっといちゃいちゃ以上の行為がずっとお預けになっていた。
いや、厳密に言えば。数時間の間にヤろうと思えばできたとは思うのだが。相手の須藤になぜか慎弥との初めてはゆっくりじっくりしたいという謎のこだわりがあったため、その意志を尊重?して慎弥も特に異は唱えなかった。付き合い始めてから特に何の問題もなく須藤と仲良くしていたので、気持ちが満たされていたからかもしれない。
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