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気になる話 6

『ごめんね、青月くん……でも、僕が言ってることは嘘でもなんでもない事実だから』 「……西野、君」 ごめんねって、謝るのはオレの方なのに。 オレが取り乱しても西野君は冷静なまま、心のない声で淡々と言葉を紡いで。 『弘樹くんは、サークルの飲み会で先輩からお酒を勧められたらしくてね。その時にあった出来事らしいんだけど、弘樹くん自身は何にも覚えてないみたいなの』 詳しいことが分からない状態のオレに、そう話す西野君。そしてオレはというと、混乱する頭の中でオレたちはまだ未成年じゃなかったっけと疑問を抱く。 「あの、あのさ……オレと弘樹って同い年、だよね。飲酒はまだしちゃダメだし、オレが知ってる限り弘樹はお酒飲んだことないと思うんだけど」 煙草もお酒も未成年のうちから嗜んでいたらしい雪夜さんとは違い、弘樹は飲酒も喫煙もしたことがないはずなんだ。 だから弘樹の幼馴染みとしてオレが西野君に言えることは、そんな当たり前のことだけだった。 『高校生までの弘樹くんは、そうだったかもしれない。でも、今の弘樹くんは違うよ。本当は犯罪だけど、付き合いで飲酒しなきゃいけないことだってあるもの』 オレの知らない世界、付き合いでの飲み会。 雪夜さんも時々、仕事関係で飲みに出てしまうこともあるけれど。未成年にお酒を勧める側の頭がどうかしてると思ってしまうのは、オレだけなんだろうか。 でも、勧められても断わることだってできるはずなんだ……はずだけれど、弘樹にはそれができなかったんだと思う。 バカなくせに、場の空気をオレよりも読める弘樹。誰とでも親しみやすい性格の裏では、オレの知らない苦労がいっぱいあるのかもしれない。 「オレには、先輩との付き合いってよく分からないけど……お酒が入っていたなら、もしかしたら本当に弘樹は覚えてないのかもしれないよ?」 被害者はどう考えても西野君なのに、オレはどうして弘樹を庇おうと思うんだろう。中立的な立場にいなきゃならないオレが、弘樹の肩を持ってはいけないのに。 西野君の話が事実だったとしても、オレより西野君の方が今の弘樹のことをよく知っているとしても。やっぱり、やっぱり弘樹は浮気なんてしないって……オレの勝手な想いが、西野君を少しずつ傷つけていく。 『僕だって、僕だって弘樹くんが女と寝たなんて思いたくないよ。でも、証拠が残ってる以上は……弘樹くんのこと、信じられない』 「その証拠って、弘樹のスマホに写真が残ってるってこと?本当に浮気するつもりだったら、わざわざそんな写真撮るかな……隠蔽工作する頭なんて、弘樹にはないと思う」 人の恋人を、親友の弘樹を、オレはどれだけバカにすれば気が済むんだろう。西野君と通話しながらも、オレはそんなことを思ってしまって。 バカな弘樹の失態にしては可笑しな点が多過ぎる今回の浮気騒動に、オレは西野君から話を聞くより直接弘樹に話を聞いた方が早いんじゃないかと思い始めていた。

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