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気になる話 8

西野君の話をふむふむと聞いて、飲む予定だったミルクも食べるつもりでいたチョコレートにも手をつけずに1時間。 暇潰しと呼ぶにはあまりにも深刻過ぎる西野君との通話が終了し、オレがやっと喉の渇きを潤そうとマグカップに手を伸ばした時だった。 「……あれ、起きてんじゃん」 玄関の扉が開いたような音が聴こえ、そのすぐあとにリビングのドアが開く。そして、不思議そうな顔をした雪夜さんが帰宅して。 「おかえりなさい、雪夜さん」 パタパタと雪夜さんの元まで走り寄っていったオレは、何も考えずに雪夜さんに抱き着いてしまうけれど。 「ただいま。今日も遅くなるってLINEで連絡入れたけど、既読つかねぇーまんまだったから寝てんのかと思ってた」 連絡を入れたのにも関わらず、全く反応がなかったオレのことを雪夜さんは心配していたみたいで。抱き着いているオレの頭をよしよしと撫でてくれる雪夜さんは、小さく苦笑いしているように思えた。 「……あ、ごめんなさい。西野君から電話かかってきちゃってて、結構な長電話してたので」 心配させるつもりじゃなかったオレは、雪夜さんを見上げ理由を話す。すると、雪夜さんはオレの頬にチュッとキスをして。 「いい子で待っててくれたなら大丈夫だ。んなことより、西野から連絡ってことは弘樹のバカが何かしたとかそんな話か?」 西野君からの連絡、そして長電話というキーワードだけで察しが良い雪夜さんはオレと西野君が話していた話題を言い当ててしまったんだ。 「えっと、その通りなんですけど……ちょっと深刻というか、弘樹と西野君の関係がかなり拗れちゃってるみたいなんです」 ずっとリビングの真ん中で抱き合っているわけにはいかず、オレは雪夜さんから離れて夕飯の用意に取り掛かりつつ、雪夜さんの問いに答えた。 「ふーん……あ、でもつい最近お前に会いに2人で来たって言ってなかったっけ。どんなことしたら、こんなに急に仲悪くなるんだよ?」 着ていたスーツのジャケットをソファーの背に引っ掛け、雪夜さんはそう言いながら煙草を咥えてジッポで火を点けていく。 すると、テーブルの上に置きっぱなしにしていたオレのスマホが突然震えて。 「星くん、西野からLINEきてる」 画面に表示された通知を見た雪夜さんは、煙草を咥えたままキッチンにいるオレの元までスマホを持ってやってきたけれど。 片手にスマホを持ち、口に咥えた煙草をもう片方の手で支えることのない雪夜さんは、空いたその手でネクタイを緩めながらオレとの距離を詰めてきて。 「あっ、ありがと……ござ、ますっ!」 「ありがとうございます、な。ゴザマスってなんだ、星くん動揺し過ぎ。西野と2人で、俺に見られちゃまずい話でもしてた?」 差し出されたスマホを受け取り、意味不明な感謝をしたオレを見て雪夜さんはクスクス笑っている。 でも、オレが動揺したのは西野君との話じゃなくて。雪夜さんの一瞬の仕草に、ドキドキしちゃっただけだったから。 「なんでオレの恋人は、無駄にカッコよくて、無駄に色気を放つんだろうって……そう思ったら、変な言葉になっただけ、です」

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