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倦怠期って 6
一緒に生活している今も、お互い別の場所で暮らしていた過去でも。雪夜さんのことを疑うことなく信じられたのは、雪夜さんの言動全てからオレへの想いが感じ取れているからなんだと思う。
「俺、白石さんと出会った時から何にも変わってないんッスね……自分のことしか考えてなくて、俺は悠希のことを大切にしてるつもりなだけだ」
オレと雪夜さんの前にいる弘樹は、オレにはよく分からないことを呟いていく。
「セイのことを考えて、白石さんはセイから俺を奪うことをしなかったじゃないですか……そのお陰で今があるし、俺はセイと笑い合えるけど」
「そういや、お前はあの時も自分のことしか考えてないとか言ってたな。弘樹のそういう部分も悪いもんじゃねぇーとは思うけど、お前が後悔ばっかしてると星が心配すんだろ」
2人の間でそんなことがあったんだって、オレは詳しく知らない弘樹と雪夜さんの話に耳を傾ける。
「西野の誤解だって分かったとしても、今のお前じゃ西野を繋ぎ止めておくのは難しいと思うぞ。西野はお前より経験もあるし頭の回転も早ぇーからな、弘樹のことを思ってお前から離れる選択するのは時間の問題だ」
「そんな、そんなの絶対嫌ッス!!」
弘樹のためを思って厳しい台詞を浴びせた雪夜さんに、弘樹は大きな声を出して反論する。そんな2人を見ているオレは、色々な思いが溢れてしまって何も言えなかった。
後悔するのは、悪いことじゃない。
自分の行いを反省して、次に活かせるように。
失敗しても、やり直すことは可能なんだと。
ただ、それには弘樹が今よりも責任を持たなきゃダメだよって。西野君との関係を保ちたければ、付き合いを簡単に見ちゃいけないって。
男女の関係のようにはいかない男同士の付き合い方には、それなりの覚悟がいるんじゃないのかと。そう問い掛けるような雪夜さんの言葉は、オレや弘樹が考えているより重いものだった。
「……お前はこの先、結婚もせずに子供も授からずに、独身者として周りから見られることになる。今はまだ学生だからそんなん関係ないかもしんねぇーけど、環境が変わっても西野を離したくねぇーと思えるか?」
「……結婚、子供って。そんなの、悠希だってまだ考えてないと思う、たぶん……分かんねぇ」
学生のうちから、オレも薄々気づいていた。
雪夜さんやオレにはあって、弘樹にはないもの。
相手と伴に生きていきたいと思える、そんな覚悟のような強い気持ち。
雪夜さんが弘樹に言ったように、一般的な幸せをオレたちは手に入れることができない。それを手に入れるってなったら、お互いが離れなきゃ望みは叶わないから。
「どれだけ愛していても、男と女じゃ身体の造りが違ぇーんだ。西野の不安はそういったことも含めてのもんだろ、だから男の自分よりも女の方がいいんじゃねぇーかって考えちまうんだよ」
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