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第11話過剰な世話

 しばらく俺たちはソファで休憩を取った。  俺は血に含まれるバラの香で体をやられ、ミカルは血を失って体が疲れ、互いに気だるい体となっていた。  もう少しすればミカルは回復して、自分の部屋に戻って眠りにつくだろう。  そうなれば俺も今よりは気が楽になって心を休められる。いくら休んでも、この男が隣にいる状態では完全な休息は無理だ。  心の中で天敵の退室を願っていると、おもむろにミカルがソファから立ち上がった。 「ふぅ……少し体が回復しました。後で血を作る薬を煎じて、明日の食事に備えないといけませんね」  前もって備えることができるなら、バラの茶をやめてくれ。最上の血を台無しにする行為なんだぞ。それさえなければ美味いんだ。  口には出さないが内心ミカルへの不満を並べ立てる。そうでもしないと気が収まらない。  そんな俺の本音など知る由もなく、ミカルは満面の笑みを浮かべて俺に告げてくる。 「さて、今から貴方を風呂に入れさせて頂きます。私がしっかりと洗いますから、かゆい所があれば遠慮なく教えて下さい」  ……。  ……。  ……勘弁してくれ。  怒りを通り越し、呆れて声が出てこない。  口を閉ざしたまま何度も首を横に振って意志を伝えると、ミカルは笑みを消さずに追い打ちをかけてくる。 「手の封印は解きませんので、服は私が脱がしますね。ちゃんと貴方に合う衣装は用意してありますので、着替えの心配はいりませんよ」 「……本気か?」 「当たり前です。衛生面は人も魔の者も関係なく、大切なことですから」 「いや、確かにその通りだが……っ。せめて風呂のことは自分でやらせてくれ。封印の呪いを弱くすれば、日常生活を送るには困らない程度の力になるだろ」 「貴方に一般人程度の力を与えるなんて真似をすれば、逃げ出してしまうのは目に見えています。魔の力は使えなくとも、貴方には長く生きたからこその知識と知恵がありますから」  ミカルが俺に対して油断しない姿勢は間違っていないと思う。  それだけ脅威だと思われているのは光栄だが、風呂については折れて欲しい。切実に。  何度も訴えるがミカルの考えは変わらなかった。  しばらく風呂のことで話し合いを続けたが、ミカルの考えが変わることはない。  言い疲れて脱力した私に対して、ミカルは小さく手を振りながら部屋を出ていく。  こうして俺の風呂は、ミカルの手を借りることになってしまった。

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