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第69話襲撃

 ミカルの忌々しげな口調に、目の前の追手たちの素性を察する。  魔の者を相手にする退魔師たちの中で、彼らは人を始末することに特化した者たちなのだろう。  表向きは魔の者に寝返った者を始末するため。しかし実際は自分たちが優位になるよう、都合の悪い権力者や有力者を手にかけ、協会が自由に動ける状況を作り上げてきたことが透けて見える。  ああ、魔の者にとって厄介だからということを差し引いても、退魔師協会というのは不愉快で目障りで、反吐が出る。  俺はミカルの隣に並び、腰に挿した剣の柄へ手を置き、追手たちを見据えた。 「元仲間で情もあるだろうが、あれらは始末するぞ」 「彼らへの情など最初から持っておりませんから、どうぞ遠慮なく」  ミカルも細身の剣を抜く。何度も刃を交えたことはあるが、決して折れることのなかった剣。敵を同じにして戦う日が来るとは……と思わずにいられない。  谷を挟んで互いに攻撃姿勢を取りながら睨み合う。  下手に動けば隙を突かれる。それは追手たちも感じているらしく、誰も動こうとしない。  滝の音だけが響き渡る中──俺たちの間に影が割り込んだ。 「くっ……後ろにもいたか!」  振り向くよりも先に俺たちは各々にその場を飛び退く。  ブゥンッ、と勢いよく振り下ろされた剣の風圧が、俺を追い駆け、肌を撫でてきた。  これを合図に谷の向こう側の追手たちも橋を渡り、俺たちへ刃を向けてくる。  瞬く間に俺とミカルは引き離され、バラバラに応戦していく。  今までの追手と違い、こいつらは実際に刃を交える戦い方に慣れている。術など使わずとも魔を払う刃だけで魔の者を切り捨て、不要な人間を排除してきたのだろう。  誰が相手でも俺のやることは変わらない。  俺を仕留めたがる刃を避け、一人の追手の懐へ入り込んだ瞬間に俺は剣を抜く。  シュッ──逃げられるよりも先に剣が届く。  小さな呻きを漏らしながら追手が倒れる。  まだ息はある。が、助ける素振りも動揺もなく、追手たちは倒れた者に構わず、むしろ躊躇なくその背を踏みつけて俺へ襲いかかった。  迫る刃をかわし、一旦は逃げる素振りを見せる。  そして追い駆けようとした彼らを迎え撃つため、剣を鞘に納め、引き抜くと同時に地面を蹴る。  一瞬で彼らの間を通り、刃を食らわす。  これがただの退魔師ならば身を守れず倒れるのだが──この追手たちは剣で上手く俺の攻撃を弾き、凌いでしまう。  不意を突かれてしまったことが痛い。  橋の間近ではミカルが追手たちに取り囲まれ、追い詰められているのが見える。  切られるのが先か、崖に落とされるのが先か。  早く助けなければと俺の中で焦りが募っていく。

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