24 / 40

第24話*

 舟而は白帆を仰向けに寝かせると、隣に寄り添って手枕をして、微笑みを浮かべたまま、白帆の前髪を優しく撫でた。 「お前はいい子だね」 温かい声でそう言って、手櫛で白帆の髪を梳いた。先の丸い指が白帆の髪の間を滑っていく。  舟而の乾いた温かい手のひらが、白帆の夜気に冷えた耳を何度も掠める。  その手は次第にうなじへ届くようになり、首筋を撫で、鎖骨、肩と撫でた。 「白帆はいい子だ……」  頬に接吻されて、白帆は全身の力が抜けて行くのを感じ、慌てて目を開けた。 「先生、子供扱いしないでください」 「そうかい」 舟而は目を弓形に細め、そっと白帆の唇に自分の唇を触れさせた。  二度、三度と啄むように唇が触れるうちに、二人の身体の芯は温かくなってきた。  舟而は雨垂れのように白帆の頬や額や目尻に唇を触れさせ、くすぐったがって笑った口に、口を重ねて舌を差し込んだ。 「んっ」  舌が触れ合った瞬間、白帆の身体の中に電気が走った。驚いた身体が勝手に逃げようとするのを、舟而の手にそっと押しとどめられた。 「ん、ん、んんっ」 白帆の舌が奥へ逃げても、舟而の舌は白帆の口内を動き、歯列を辿って、上顎をくすぐる。 「んーっ、んんんっ!」  白帆の身体が強張ると、舟而は口を離して再び白帆の前髪を撫でた。 「白帆、お前さんの舌を味わわせとくれ」 「は、はい!」 白帆はやんちゃな子供のように、べっと口から舌を出した。  舟而は一瞬目を丸くしたが、すぐ弓形に目を細め、白帆の舌へそっと舌を這わせる。 「んあっ!」  舌を舐められて、白帆はのけぞって逃げた。舟而はくすくす笑う。 「す、すみません。あの、私が見た本には、舐めるっていうのは描いてなくて……」  胸の中へ逃げ込んで来る白帆を抱き止めて優しく背中を撫でる。 「やり方は人それぞれで、僕はこういうやり方だってことだよ」  舟而はこめかみに口づけ、白帆の耳の形を舌先で辿った。 「せんせ、くすぐったい……っ。はあんっ!」 舟而は白帆の首筋を舌先でなぞり、そっと寝間着の合わせ目を緩めて、鎖骨まで舌を這わせていった。 「ああっ、先生」  舟而が寝間着の胸元を開けて、桜の花びらのように色づく胸の粒を口に含むと、白帆は強くて甘い感触に跳ねるように背を浮かせ、舟而の髪をかき混ぜるようにしながら頭を抱いた。 「ああ、ああ、先生……」 白帆の声は蜜のように甘くとろりとしていた。 「もっと、もっとしてください」  胸をされて、どうして腹の底が痺れるのか、腰を揺すりたくなるのかわからないが、白帆は舟而の腰へ片足を絡げて、素直に擦り付けていた。 「こういう積極的なのは嬉しいよ」  舟而は目を弓形に細め、反対側の桜色の実も口に含んで、舌先で転がした。 「ああっ! 変になっちまう」  白帆が喉を晒して仰け反る姿に、舟而は片頬を上げた。 「変になっちまえ」  舟而は視界に入る白帆の肌すべてに唇を押し付けながら、白帆の寝間着の細帯を解き、裾を開いて、下帯の隙間から手を忍ばせると、蜜を零しているものを掴みだした。 「あっ、先生。………あああああっ!」  口に含まれて、白帆は踵で敷布を蹴った。舟而は許さずしつこくして、白帆は甘く尾を引く声を上げながら、腰を震わせる。  根元まで舟而の熱い粘膜に覆われ、舌が柔らかく押し当てられる。 「ああ、ああ、いけませんっ。先生、離してっ」  意思を持った舌で形を辿られ、先端を舌先で抉られた。 「はあんっ、やっ、ああっ」 困るような、泣きたいような気持ちなのに、たくさん味わいたい、もっとと言いたい  舟而の熱い手と唇の輪で扱かれて、腹の底に熱が渦巻く。 「あ、あ、先生っ、せんせいっ」  白帆は舟而の口の中ではじけ、甘さと痒みを伴う高熱に腰を射抜かれた。  余韻でまだぼんやりしているところへ、舟而は濡れた唇で笑い掛ける。 「お前と一つになってもいいかい」 「はい……」  ぼんやりしたまま頷くと、下帯が外されて、傾けた瓶からゆっくり垂れてくる香油を塗りつけられた。 「んっ」 どうするのかは知っていても、実際に触れられると緊張する。 「ゆっくり大きく呼吸をしなさい」  優しく促され、頬への接吻であやされて、白帆はまた少しずつ官能に飲み込まれていく。 「ああ、先生。……っ!」 「ゆっくり息を吐いて。あんまり締め付けないでくれ」  香油を塗りこまれ、撫でまわされ、指先を深く差し込まれて、腹の内側を探られる。そっと膨らみを撫でられて、白帆は鼻にかかった悲鳴を上げた。 「はあああんっ!」  脳天へ抜けるような刺激に全身を硬直させ、ゆっくりと弛緩させる。何が起きたのかと瞳を左右に動かす白帆に、舟而は笑い掛けた。 「気を()ったんだよ。男はここで気を遣ることができる」  教えながら指を増やして擦りあげた。 「ああっ、んっ、んんっ」 白帆は甘い声を出しながら、首を左右に振った。 「先生……っ、先生と、一緒になりたいです」  舟而は白帆の手に、自分の細帯の端を掴ませた。白帆は細い指で舟而の帯を解く。舟而は寝間着を脱ぎ捨てて、白帆の身体を引き起こし、自分の膝の上に向き合って座らせた。 「お前さん、自分で入れてごらん」 「えっ」 「初めてだろう。強引にされるより、自分で導くほうがいい」 舟而は下帯を外して、そそり立つものを白帆の手に握らせる。白帆は息を飲んだ。 「火傷しそうです」 白帆は大人の男の逞しさを手のひらに包み、香油を塗り付けながら、全身を熱くした。 「来ておくれ、白帆」  熱い手で細い腰を掴まれ、教えられて、白帆は舟而の肩に掴まりながら、ゆっくり腰を沈めていく。 「んっ、ああっ!」  押し広げられ、満たされていく感覚に顎を上げ、仰け反るのを舟而に抱き締められて、肩や頬に接吻を受けてあやされながら、ようやっと根元まで飲み込んだ。 「はあっ、先生……」 「ああ、白帆」  抱き合う二人のかなめを少しずつ舟而が揺すり始めた。 「あっ、あっ、あっ、せんせ……っ」 白帆は揺れるたびに湧き上がる甘い感覚に声を上げ、舟而の首にしがみついて耐えた。 「ああっ、白帆。白帆……っ」  白帆の黒髪を撫でながら、舟而は律動を強く早くしていった。二人の視界はぼやけ、互いの肌の感触だけが皮膚を伝う。 「先生っ、もう……、もう……っ」 「おいで、白帆。僕もじきだ……っ」  白帆もぎこちなく身体を動かし、舟而と高めあって、つなぎ目から噴き上がるような熱を感じてはじけた。  奥歯を噛みながら咆哮する舟而に強く抱かれて、そこで白帆の意識が途切れた。

ともだちにシェアしよう!