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第24話*
舟而は白帆を仰向けに寝かせると、隣に寄り添って手枕をして、微笑みを浮かべたまま、白帆の前髪を優しく撫でた。
「お前はいい子だね」
温かい声でそう言って、手櫛で白帆の髪を梳いた。先の丸い指が白帆の髪の間を滑っていく。
舟而の乾いた温かい手のひらが、白帆の夜気に冷えた耳を何度も掠める。
その手は次第にうなじへ届くようになり、首筋を撫で、鎖骨、肩と撫でた。
「白帆はいい子だ……」
頬に接吻されて、白帆は全身の力が抜けて行くのを感じ、慌てて目を開けた。
「先生、子供扱いしないでください」
「そうかい」
舟而は目を弓形に細め、そっと白帆の唇に自分の唇を触れさせた。
二度、三度と啄むように唇が触れるうちに、二人の身体の芯は温かくなってきた。
舟而は雨垂れのように白帆の頬や額や目尻に唇を触れさせ、くすぐったがって笑った口に、口を重ねて舌を差し込んだ。
「んっ」
舌が触れ合った瞬間、白帆の身体の中に電気が走った。驚いた身体が勝手に逃げようとするのを、舟而の手にそっと押しとどめられた。
「ん、ん、んんっ」
白帆の舌が奥へ逃げても、舟而の舌は白帆の口内を動き、歯列を辿って、上顎をくすぐる。
「んーっ、んんんっ!」
白帆の身体が強張ると、舟而は口を離して再び白帆の前髪を撫でた。
「白帆、お前さんの舌を味わわせとくれ」
「は、はい!」
白帆はやんちゃな子供のように、べっと口から舌を出した。
舟而は一瞬目を丸くしたが、すぐ弓形に目を細め、白帆の舌へそっと舌を這わせる。
「んあっ!」
舌を舐められて、白帆はのけぞって逃げた。舟而はくすくす笑う。
「す、すみません。あの、私が見た本には、舐めるっていうのは描いてなくて……」
胸の中へ逃げ込んで来る白帆を抱き止めて優しく背中を撫でる。
「やり方は人それぞれで、僕はこういうやり方だってことだよ」
舟而はこめかみに口づけ、白帆の耳の形を舌先で辿った。
「せんせ、くすぐったい……っ。はあんっ!」
舟而は白帆の首筋を舌先でなぞり、そっと寝間着の合わせ目を緩めて、鎖骨まで舌を這わせていった。
「ああっ、先生」
舟而が寝間着の胸元を開けて、桜の花びらのように色づく胸の粒を口に含むと、白帆は強くて甘い感触に跳ねるように背を浮かせ、舟而の髪をかき混ぜるようにしながら頭を抱いた。
「ああ、ああ、先生……」
白帆の声は蜜のように甘くとろりとしていた。
「もっと、もっとしてください」
胸をされて、どうして腹の底が痺れるのか、腰を揺すりたくなるのかわからないが、白帆は舟而の腰へ片足を絡げて、素直に擦り付けていた。
「こういう積極的なのは嬉しいよ」
舟而は目を弓形に細め、反対側の桜色の実も口に含んで、舌先で転がした。
「ああっ! 変になっちまう」
白帆が喉を晒して仰け反る姿に、舟而は片頬を上げた。
「変になっちまえ」
舟而は視界に入る白帆の肌すべてに唇を押し付けながら、白帆の寝間着の細帯を解き、裾を開いて、下帯の隙間から手を忍ばせると、蜜を零しているものを掴みだした。
「あっ、先生。………あああああっ!」
口に含まれて、白帆は踵で敷布を蹴った。舟而は許さずしつこくして、白帆は甘く尾を引く声を上げながら、腰を震わせる。
根元まで舟而の熱い粘膜に覆われ、舌が柔らかく押し当てられる。
「ああ、ああ、いけませんっ。先生、離してっ」
意思を持った舌で形を辿られ、先端を舌先で抉られた。
「はあんっ、やっ、ああっ」
困るような、泣きたいような気持ちなのに、たくさん味わいたい、もっとと言いたい
舟而の熱い手と唇の輪で扱かれて、腹の底に熱が渦巻く。
「あ、あ、先生っ、せんせいっ」
白帆は舟而の口の中ではじけ、甘さと痒みを伴う高熱に腰を射抜かれた。
余韻でまだぼんやりしているところへ、舟而は濡れた唇で笑い掛ける。
「お前と一つになってもいいかい」
「はい……」
ぼんやりしたまま頷くと、下帯が外されて、傾けた瓶からゆっくり垂れてくる香油を塗りつけられた。
「んっ」
どうするのかは知っていても、実際に触れられると緊張する。
「ゆっくり大きく呼吸をしなさい」
優しく促され、頬への接吻であやされて、白帆はまた少しずつ官能に飲み込まれていく。
「ああ、先生。……っ!」
「ゆっくり息を吐いて。あんまり締め付けないでくれ」
香油を塗りこまれ、撫でまわされ、指先を深く差し込まれて、腹の内側を探られる。そっと膨らみを撫でられて、白帆は鼻にかかった悲鳴を上げた。
「はあああんっ!」
脳天へ抜けるような刺激に全身を硬直させ、ゆっくりと弛緩させる。何が起きたのかと瞳を左右に動かす白帆に、舟而は笑い掛けた。
「気を遣 ったんだよ。男はここで気を遣ることができる」
教えながら指を増やして擦りあげた。
「ああっ、んっ、んんっ」
白帆は甘い声を出しながら、首を左右に振った。
「先生……っ、先生と、一緒になりたいです」
舟而は白帆の手に、自分の細帯の端を掴ませた。白帆は細い指で舟而の帯を解く。舟而は寝間着を脱ぎ捨てて、白帆の身体を引き起こし、自分の膝の上に向き合って座らせた。
「お前さん、自分で入れてごらん」
「えっ」
「初めてだろう。強引にされるより、自分で導くほうがいい」
舟而は下帯を外して、そそり立つものを白帆の手に握らせる。白帆は息を飲んだ。
「火傷しそうです」
白帆は大人の男の逞しさを手のひらに包み、香油を塗り付けながら、全身を熱くした。
「来ておくれ、白帆」
熱い手で細い腰を掴まれ、教えられて、白帆は舟而の肩に掴まりながら、ゆっくり腰を沈めていく。
「んっ、ああっ!」
押し広げられ、満たされていく感覚に顎を上げ、仰け反るのを舟而に抱き締められて、肩や頬に接吻を受けてあやされながら、ようやっと根元まで飲み込んだ。
「はあっ、先生……」
「ああ、白帆」
抱き合う二人のかなめを少しずつ舟而が揺すり始めた。
「あっ、あっ、あっ、せんせ……っ」
白帆は揺れるたびに湧き上がる甘い感覚に声を上げ、舟而の首にしがみついて耐えた。
「ああっ、白帆。白帆……っ」
白帆の黒髪を撫でながら、舟而は律動を強く早くしていった。二人の視界はぼやけ、互いの肌の感触だけが皮膚を伝う。
「先生っ、もう……、もう……っ」
「おいで、白帆。僕もじきだ……っ」
白帆もぎこちなく身体を動かし、舟而と高めあって、つなぎ目から噴き上がるような熱を感じてはじけた。
奥歯を噛みながら咆哮する舟而に強く抱かれて、そこで白帆の意識が途切れた。
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