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第9話 ※(完結)

「あんっなに淡白で無反応だった憐ちゃんがさぁ、今オレのことでスッゲー悩んで、オレで反応してるの……普通に可愛いんだよ……クソ」  こんなにも愛おしくてはもうたまらない。  抑えの利かなくなった柳は、ソファーに憐を押し倒した。キスをしながらお互いの服を脱がせていく。 「スッゲー……なにこれ」  下着から顔を出した憐の逸物は立派に勃起していた。萎びて、柔らかくて、ただ飾りみたいにぶら下がっていたものとは訳が違う。  憐も興奮しているんだ。これからの情事を、心待ちにしてくれている。  竿を片手で握って扱きだすと、憐が待ってくれ、と言わんばかりにその手首を掴まえる。 「んっ……義之……ぁ……変、だ……自分でする時と全然違う……」 「そりゃそうだべ。大丈夫……今日はちゃんとイカせてやるよ。憐ちゃんも絶頂してみてぇだろ?」  こくり。小さく頷く憐。オーガズムに興味が出てきたとは、幸先が良い。 「はぁ……ぁ……は……こっ、これっ僕感じてる……? 気持ち良く、なってるのかな……?」 「なってるなってる。だって顔赤くなってきてるし、チンコも熱くて硬くて脈打ってる」  ここまで反応されると、憐に阻まれていても扱く手が止まらない。  射精させてやりたい。目も眩むような絶頂を味わわせてやりたい。自分優位ではなく、憐の為に。  スナップを利かせていると、ヌチャヌチャ淫靡な水音さえしてきた。カウパーすら漏れてきたということだ。  それを潤滑剤代わりに絡ませ、手のひら全体で亀頭を責めまくる。  同時にアナルをほぐしていって、前立腺を刺激する。 「んっ!! く、ぅ……ぁ……出したい……でも……」 「気にしない気にしない。チンコで射精するのは当たり前。そんでもってオレにとってはケツマンでイク奴も当たり前。我慢すんなって、ほら」 「でもこの感覚……知らない……怖い」 「オレがいんだろーが」  ぎゅーっと前立腺から膀胱を押し潰すようにしながら、扱くスピードを速める。  憐の腰がビクビクと跳ねて、仰け反った。 「んうううぅっ!! あぁっ! ふ、あぁ……は……」  憐もこんな嬌声を上げるのか。そんな風に思うほど、彼なりに声を潜めながらであったようだが、喘ぎながら射精した。  こってりとしたゼリー状の白濁が憐の腹にぶち撒けられる。夢精でもしない限り、本当に自慰は滅多なことがないとしないのだろう。 「はーっ……はー……僕……イッた……?」 「ヤベェ勢いでイッてたぞ。そんなに感じた?」 「…………うん」  頬を染めた憐が目を伏せる。自らの手で絶頂してくれたことにこんなにも充実感を得られるなんて、奴隷調教では感じたことがない。  憐だからだ。オレも憐だから幸せなんだ。 「ああ~~ッ! 憐ちゃんがイクとこ見てフルボッキしてやんの! ケツに入れてぇ! けど今日のとこは我慢するよ……ほら、憐ちゃんも段階を踏んだ方が、」  欲望の塊を言い終わる前に、起き上がった憐が柳の肩を両手で押し倒した。  これでは形勢逆転だ。憐にのしかかられ、柳は困惑するしかない。 「え? え? なに? オレってばヤられんの?」 「……さっきの、良かったから。……入れていいよ」  「たぶん、今なら感じると思うし」そう耳元で囁かれ、柳は武者震いした。 「ずっと傍にいてね、義之」 「な、なんだよ。案外可愛いこと言えんじゃねぇかよ」 「こっちも探偵使って、仕事はしていないようだ、黒瀧組の構成員であることは事実、「ホテルや友達の部屋」は“セフレ”の真実等を突き止めた訳。別れるなら刺し違えてでも警察を介入させるのが条件だからね」 「うわ重っ……」 「それが嫌なら毎日この家に帰ってくればいい。外では僕がクリーンなお金を稼いでくるし、必要な家電は買うからせめて家事は覚えて」 「お、オレが家事担当なのかよ!? 無理無理、絶対できねぇぞ!?」 「義之に適当な仕事紹介したら三日以内にやめそうだし、自分で選ばせたらそれこそ裏稼業に行くでしょ。そんなことなら大人しく主夫してよ」 「マジかー……」  人に興味なさげだった憐が、思いのほか嫉妬深く束縛の強い男だったとは。  それでも一生を捧げてくれるのであろう恋人ができたことに、柳はつかの間の心の平穏を感じたのであった。

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