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第44話 高瀬
「なにか話して」
裸で抱き合って、
それは一旦終わったと互いにわかる空気の中で、
真乃斗くんの背中にキスをしてたらそう言われた。
つまり、もう今日はここでおしまいっていう、
真乃斗くんからのサインでもある。
きっとこのまま少し強引に身体を撫でていれば、
真乃斗くんはそれに従うだろうと知ってはいたけれど、
今日はおとなしく身を引いた。
「どんな話しがいい?」
キスを止めて真乃斗くんの隣に寝転がると、額にかかる髪を撫でた。
「高瀬さんのお母さんの話し」
「母さん?」
「もしくはお父さん」
両親のことを聞かれるのは初めてだった。
珍しいなと思いながらもなにを話そうかなと考える。
「高瀬さんのお母さんってどんな人?」
そうして、考えていたら先に真乃斗くんが話題をふった。
これもまた、とても珍しいことだった。
「そうだなぁ、、、潔いヒトって感じかな」
すると、真乃斗くんの視線がこちらを向く。
抱き合ったあとに眠たそうにしてないことは、滅多にないことだった。
「高瀬さんに似てる?」
「そうだねぇ、、、顔は似てるかな」
「性格は?」
「あまり似てないと思う」
俺のような息子を産んでしまっても、
母親はそれをどうにかしっかり受け止めて、
俺が幸せになるよう常に気を配ってくれているような人だ。
「父さんは医師になること自体は喜んだんだけど、
心療内科が気に入らなかったんだ。
だけど母さんはどんな仕事を選んでも応援するっていつも言ってたな」
「なんで心療内科は気に入らないの?」
「医者っぽくないから」
「なにそれ?」
「なんだろね」
首をかしげてそう言えば、真乃斗くんは笑った。
その笑い声は幸せと平和と、喜びが溢れる音だ。
「似てるんじゃない?」
真乃斗くんにねだられてこんな風にベッドで話しているときに、
彼がぱっちり目を開けて反応してくれるのはおそらく初めてだ。
「ん?」
「高瀬さんと高瀬さんのお母さん。性格も似てそうだよ」
「そうかな」
どうだろうかと思って、
まぁ遺伝子は半分、受け継いでいるだろうからねと続ける。
「お父さんはどんな人?」
「ん~、、、ハッキリしてるヒト」
あの人はいつも自分の意思をはっきり持っていて、
押し付けるとまではいかなくても、
どこかいつも自分の判断に自信を持っている。
つまり、
俺の判断よりも自分の判断を信じているような人だ。
「それもやっぱ高瀬さんって感じ」
「似てるって?」
「うん」
俺はあそこまではっきりした意思も自信もないとは思ったけれど、
そのことを真乃斗くんには言わなかった。
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