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第100話 真乃斗
すると、高瀬さんは片手に持ってた携帯をテーブルに置いて、
オレの頭をゆっくり撫でる。
無意識に瞼が閉じると、
高瀬さんの呼吸に合わせて上下する自分のカラダを感じた。
「あったかい」
きっと散歩は楽しくなるだろうと思った。
もしかしたら、タピオカを飲めなくても。
「哲至さんに電話しようかな」
思った瞬間にはもう言葉にしていた。
最近はずっとこんな感じだ。
「4人でタピオカが飲みたい気分」
オニイチャンとその恋人と、一緒にタピオカが飲みたいと思った。
いままで、美術館以外に哲至さんと出かけることはほとんどないし、
自分から誰かに電話をしたいと思ったこともない。
それは自分が電話が苦手だってことと、哲至さんを好きだったからだった。
「ん。いいね」
抱きしめられながら、高瀬さんの声が身体のオクに響く。
高瀬さんのいいねには、好きだよと同じものが隠れてる。
「4人で会うの、久しぶりだね」
「あの人たち、出てくるかな」
オニイチャンもその恋人も、基本は出不精なのだ。
「ん~真乃斗くんが誘えば出てきそうな気がする」
そうしてオレは、
高瀬さんにそう言われると、そんな気がする・・・と思った。
「電話をして、そうしたら少しエッチなことをしよう」
思わずぱっちり目を開けて、次の瞬間ニヤけながら顔を上げる。
「高瀬さんってエッチ好きだよね」
「そうだよ。でも先にしようって言ったのは真乃斗くん」
気づけば自分は、ヤラしく腰を撫でられている。
高瀬さんの視線とその手の動きに満足して
ふふっと笑いながらその瞳を見つめれば、
その目の奥に、
きっと自分のなにもかもを許して、それは愛なんだってわかる
見えないナニカが光った。
遠回りをしたような気もする。
きっとオレはまたココで眠ってしまうだろうし、
相変わらずそういう自分は好きじゃないだろう。
ただ、この大好きなヒトとずっと、そばにいられたら
あの海の底へ沈んでいったとしてもまた、
真ん中に戻ってこられるような気がする。
「携帯取っておいで」
「ん」
短くチュッとしてからがばっと立ち上がる。
携帯は寝室におきっぱなしなのだ。
そして、寝室に向かおうとして一瞬ためらうと、高瀬さんを見た。
「・・一緒に行く?」
高瀬さんの口角が上がった。
「少しにならないかも」
起き上がりながら高瀬さんがそう言って、オレのほっぺにちゅっとした。
「・・・だね」
手を繋いで、置いてきた携帯を取りに
・・・半分くらいはそういう理由で・・・
寝室へ向かった。
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