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第99話 真乃斗
だって言われて少し迷ったから。
確かにタピオカは飲みたいけど、寒くて動くのが億劫だったし、
外は明らかにココより寒いのだ。
迷った自分に素直に返事をしないでいれば、
散歩がてら買いに行こうと高瀬さんはもう一度言った。
「ん~・・・でも寒いしなぁ」
「動けばあったかくなるよ」
朝からタピオカが飲めるお店を探そうと、
高瀬さんはどこか明るく言って立ち上がる。
きっと、携帯を取りに行くためだ。
無意識に視線が高瀬さんを追いかけて、
立ったままで長い指で携帯を弄る、その全体をぼおぅっと見つめる。
朝の、整えられていない前髪の垂れ方や、
その髪から下にのぞく、斜めに見えるあごの輪郭や唇の造形や、
頭のてっぺんから、
自分が座った状態のままで見える高瀬さんの姿カタチのすべて。
「専門店だとほとんど11時オープンだなぁ」
高瀬さんのせいじゃないのに、その事実にとても申し訳ないって顔をして、
なんだかもうそのすべての所作がオレのためにあるって思えてしまって、
朝からやけに色っぽく映るのだった。
立ち上がって、携帯を弄る腕の中にするりと身体を滑り込ませてキスをした。
ほのかにコーヒーの味がする。
「いっぱいキスしてちょっとエッチな事もしてたらきっと、
あっという間に11時になるんじゃない?」
携帯を持ったままで、高瀬さんはオレの腰を両手で包むようにする。
そのぬくもりだけで、下半身が疼いた。
「腰が痛いんじゃなかったの?」
「ぅん。だからちょっとだけだよ」
言いながらもう一度唇を塞ぐと、
そのままオレは高瀬さんに下半身を擦りつけるように押し付けた。
そうして、
自分のカラダは高瀬さんのカラダにすっかりなじむことを感じる。
ここのところ、どうしても高瀬さんを見ているだけで、
自分の下半身がドクドクしてしまう。
見ているだけで触りたくなって、おまけに触って欲しくなってしまうのだ。
それは朝でも昼でも。
そうして、今朝のように、
もうしばらくはセックスしたくないってくらいに
抱き潰された翌朝だったとしても・・・
ソファまでの短い距離を、
高瀬さんの背中に回した腕と唇を離さないよう、どこか気をつけながら歩く。
すると唇を離さずに高瀬さんが笑って、だからオレもふふっと笑った。
自分の身体を高瀬さんが支えてくれているとわかりながら。
背もたれに生成り色した毛布がたたまれてかかっている、
そのソファに高瀬さんを押し倒しすと、
そのカラダの上に全身を、遠慮せずに乗っけた。
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