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第8話

「おい、大丈夫か?」 「だいじょーぶじゃない……。眠い……」 「……とっとと服着ろ」 むちゃくちゃ気持ちよかった分、脱力感もすげーし、疲労感も腰のダルさもハンパなくて俺は床に寝転がったまま欠伸をした。 呆れたような松原のの声がして、ズボンを頭に投げつけられる。 「いーじゃん、もうちょっとダラダラしてたってさー」 「邪魔なんだよ」 「うわ! 冷てっ!! 生徒に手出してその扱いかよ!!」 「じゅーぶん優しくしてやっただろ。お前の精液拭いて綺麗にしてやったのは誰だ? 動けないっていうからいまこうして寝せておいてやってるんだろう」 「じゃあもうちょっと寝せておいてよ!」 「もう30分もその状態だ。いい加減もう起きろ」 「ケチー」 しかたなく俺はパンツとズボン履いて制服きちんと着直して立ちあがった。 少し制服皺になってて松原がクリーニング代だしてやる、って言ったけど別に良いって断った。 俺より下敷きにしてた松原の上着のほうが皺くちゃだし。 「……ってぇー」 ―――立ちあがった、けどすぐに屈みこんでしまう。 腰イテェ! ケツ穴いてぇ! 「松原……痛いんですけど」 「そりゃ痛いだろ」 「えー!」 「その分気持ちよくなったんだからいいだろ」 「そりゃそうだけどー!」 腰摩りながら今度はゆっくり立ちあがって、とっくに仕事再開してる松原のところに行く。 松原は3年の受け持ちだから開かれてる資料とかは俺が見てもさっぱりわかんねー。 3年になってコイツ担任とか当たりませんように、なんて願いながら俺はなんとなーく疑問で訊いてた。 「慣れたら痛くなくなるのかな」 他意は―――なかった。 ボールペンを動かす手を止めた松原が俺を見上げる。 眼鏡越しにその目がつい30分前まであった熱を一瞬のぞかせた、気がした。 「さぁ、どうだろうな。で、お前は慣れるまでヤるつもりなのか?」 「へ? ……ま、まさかっ!」 「ふうん?」 じっと俺を見る松原に視線を泳がせてしまう。 いや、そりゃむちゃくちゃ気持ちよかったけど! 俺ホモじゃねーし! いやでも気持ちよかったけど……でも、ヤる相手も……。 んー、とざっとクラスメイトの顔思い浮かべて"ねーよなぁ"と打ち消す。 「向井」 「な、なに」 「下手なヤツとしても痛いだけだぞ」 「……」 俺の考え見透かしたように松原が鼻で笑う。 ムッとするのとカッと顔が熱くなるのと同時で、そして松原が俺のネクタイを引っ張って引き寄せるのも同時だった。 机に肘ついて近づいた俺を眺めながら松原が眼鏡を外す。 「まぁ俺は―――上手いけどな?」 口角を上げる様は悔しいけど美形だしカッコいいけど、ムカつく! 目が艶っぽくて笑ってるのも、ムカつくけど……。 その眼差しに含まれた熱の意味もなんとなくわかって俺は口を尖らせながらも松原をじーっと見つめた。 「松原」 「"先生"」 「……先生」 「なんだ」 「……―――ね、また」 俺とシよーよ、ってコイツには効き目なんてないだろうってわかってるけど女の子用必殺上目遣いモードでおねだり。 そして目を眇める松原に俺からキスしたのだった。 【おわり】

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