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後編

数年後、本当に死んでしまったのはリチャードの方だった。子どもの頃より丈夫になったけど、風邪をこじらせてあっという間に天国に旅立ってしまった。 あの、18回目の誕生日。いや、もっと前からだろうか。ボク達は溶け合って一つの魂になってしまったのだろう。不思議と悲しいとは思わなかった。 忌々しいエドワードは、ボクが家督を継ぐと同時に解雇して追い出してやった。ページボーイやタイガーにも手を出していたようで、それを使用人達の前で追及してやったら青ざめていた。 跡継ぎであるボクにも手を掛けていたことが明るみになってしまい、婚約は破棄され縁談も来なくなった。 ボクは平気だ。だって、愛しているのは1人だけだし、 僕はヘンリーではない・・・・・・・・・のだから。 ヘンリーと僕は、時々入れ替わって生活していた。エドワードに怯えるヘンリーが可哀想で。 エドワードに嬲られるのは恐ろしかった。こんな想いをしていたのかと怒りに燃えると同時に、ヘンリーと感情を共有できて少し悦に入る部分もあった。 また、ヘンリーと入れ替わっていることが分からないように必死で勉強した。ヘンリーと入れ替わっている時間が増えるにつれ、なんだか僕とヘンリーの境界がなくなっていくような気がした。 でも、何も病気に罹りやすくなるところまで似なくても良かったのに。 ヘンリーは、呆気なく逝ってしまった。 僕は今でも、ヘンリーのままだしこれからもそうやって生きていく。だって、ヘンリーはリチャードで、リチャードはヘンリーなんだから。 だけど、たまにあの地下室に降りることがある。 僕達のこっそり集めた宝物やあの絵は、今でもそこに埃を被っていた。 寝台に寝転がる。僕と同じ顔をした少年の顔が浮かぶけど、ヘンリーなのかリチャードなのか分からない。 天蓋の紐をなんの気もなしに引っ張れば、目にも鮮やかな薔薇の花弁が降ってきた。 そんな馬鹿な! 跳ね起きそうになるも、金縛りにあったように身体がベッドに張りついている。もう一度、僕と同じ顔をした少年の顔が僕を見下ろす。 「・・・ヘンリー・・・?」 呟くと同時に、頬に涙が伝った。 そうだ、思い出した。 今日は僕達の20回目の誕生日だっけ。 ああ、嬉しいよヘンリー。 このまま死んでしまえたら、どんなに幸せなんだろう。 薔薇色の幻に埋もれながら、僕は涙を流し続けた。 end

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