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生贄学園〜Another〜1 ※女性凌辱描写

 その日、地下クラブの広間に大きな産声が上がった。  平穏な日々を送っていた名家の令嬢が拉致監禁され、凄惨な凌辱を受けた末に産み落とされたのは、元気な男児だった。 「さて、こやつも母親と同じく解剖せねばならんな。後で儂の研究室に持って来い」  クラブオーナーの老人は顔色一つ変えず、冷たく助手に命令する。  女児ならば生まれながらの性奴隷にさせることもあるが、それに比べれば需要の少ない男児にはさほど価値はなかった。  産んだばかりの我が子をそのまま取り上げられ、息も絶え絶えの若い女は長い黒髪を振り乱し、涙ながらに訴えた。 「ま……待ってください。私はどうなっても構いません。だからどうかお願いです……その子だけは……想悟の命だけは、助けてください……!」 「ふん、勝手に名前まで付けおって、情でも移ったか。馬鹿な女じゃ。貴様は見世物の性奴で、その子供など屑以下の存在だと言うに」 「どうして……そんなに酷いことを仰るの……。この子は、あなたの血だって入っているのに……」  そう、彼女が想悟と名付けた彼は、正しくオーナーの血を引いている。  しかし、同じ遺伝子を持つ人間を後世に残すことになど興味はない。オーナーの目的はただ一つ、人体を切り刻み非合法な研究を重ねることだ。  元々は良家の生まれにあったオーナーは、名を八代治(やしろおさむ)といった。だがそれはとっくの昔に捨てた名だ。  彼は一族の中でも抜群の才能を誇り、優秀な外科医師になった。  だが、彼にとっての医学は必ずしも人助けのものではなかった。幼い頃、動物の解剖から始まり、だんだんとその興味が人間にまで移っていったのは自然の成り行きと言えよう。  表向きは美容整形外科を開業し、そこで稼いだ資金と名声を元手にその当時黒瀧組で頭角を現し始めた蓮見龍信や、有名大学院の教授をしていた世良崇善を始め、大物政治家や警察組織、それらを影で操る財界の重鎮らと着実にコネクションをつくっていった。  そして彼は、自身の探究心を満たす為の組織、欲望渦巻く地下クラブのオーナーとなった。  霧島麗華と出会ったのは、彼が還暦を過ぎた頃だ。  大財閥の流れを汲む霧島家の一人娘として産まれた彼女は、絶世の美しさを誇り、聡明で、気高い令嬢だった。  初めは会員を愉しませる為に、クラブにとって大きな資金源となるようにと、長年目をつけて苦労の末手に入れた哀れな生贄だった。  それだけならば、目の肥えたオーナーにとっては日頃攫われてくる普通の女と大して変わりはない。  どれだけ高貴な血が流れようと所詮は女なのだ。主人たる雄を悦ばせ、やがてその子供を身籠もる。いずれその身体が使い物にならなくなれば、子供もろともゴミ処理場行きだ。  いつの世も変わらない人間達。変わらない日常。そんな繰り返しの日々に、彼は飽き飽きとしていた。  そんな中、オーナーが麗華に執着したのは、彼女が極めて不可思議な女だったからだ。  最初に異変を感じ取ったのは、わかりやすい暴行を加えた後のことだった。  どれだけ酷く犯し、一生残るような傷を付けても、次の日にもなれば何事もなかったかのように傷が消えているのだ。  手足を切断しても、生きたまま内臓を引きずり出しても、頭や心臓を潰しても。  今にも死にそうな断末魔の叫び声を上げ、失神し、一時的に動かなくなっても。完全に落命することだけは決してなかったのだ。  加えて麗華は気難しいオーナーの心を完全に掌握していた。  共感力が高いだけという問題ではない。時には彼の凍った心を解きほぐそうと寄り添い、温かい言葉をかけたりもした。  過酷な凌辱を受け続けているというのに、そのように献身的な女は見たことがなかった。それがオーナーには気味が悪くてたまらなかった。  これまでの人生を覆されるかのようなあまりにも非科学的な女。  麗華を監視していく中で、彼女は人の心を読む力があり、その力に比例した驚異的な治癒能力をも持つことを認めざるを得なかった。  そんな麗華に対してオーナーが抱いたのは、恋愛感情などという生易しいものではなかった。  異常なまでの固執だ。男として、この女を必ずや自身の手で孕ませなければならないと決心した。  人生の大半を悪魔の所業で埋め尽くしてきた自身の遺伝子と、この呪い子のような能力を持つ彼女の遺伝子が混じった子はいったい何なのだろう。人間か、化け物か。  何の変哲もない人間ならば、その命はほどなくして終わりを迎えることになる。  または、どちらかの心身が壊れるまでひたすらに麗華に子を産ませ、研究を続けるのも手だ。  だが、もしも化け物であるとするならば──それはこのクラブを揺るがしかねない途方もない“研究成果”だ。  計画を話した際には、「そんな理由で子供を持ちたいだなんて」「愛を知らないあなたが可哀想でたまらない」麗華はただ、悲しそうに言った。  嫌味ではなく、本当にそう思っているのだろう。それが余計にオーナーの機嫌を損ねることになった。  立場はこちらが上であるのに、まるで情けをかけられたようで腹が立って仕方なく、メスで滅多刺しにしながら犯した。  どうせ死なないのだから、明日にはピンピンしているのだから、どうやって子作りをしようが変わらない。喉を切り裂かれた麗華は喘ぐこともできず、拘束の中で苦痛にのたうち回っていた。  それは、想悟ができるまでほとんど毎日行われた。最後の方にはもう、麗華も協力的になっていた。自ら体外受精も志願し、子供を作ることを望んだ。  「あなたが誰かを愛せなくても、心配しないで」……自分ならできるから。はっきりとした語調で、頼もしいような、やはり馬鹿にされているようなことを宣言したのはよく覚えている。  妊娠が発覚してからも、「責任持ってこの身体で大事に育てる」と気丈に振る舞ってはいたが、時折目を赤くしていたのを知っている。  「この子は私の子、お父様の孫になる子、きっと愛せる」そんな風に、自分を納得させようとしているのか、あるいは本心であるのか、監禁部屋で一人ブツブツと呟いていた。  この研究が一回で済む可能性は限りなく薄い。  今後、何度も実子の死を味わうくらいなら、早期からくだらない感情など捨てた方が楽だと言うのに、彼女の決意は頑なだった。  それには、オーナーも勝手にしろと投げやりな言葉を吐いた。

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