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7.伊藤 宗壱(理宇✕宗壱)
「ノゾキって、いいよね」
代わり映えのないいつもの子供部屋。という名称で呼んでるものの、物少なくモノトーンで揃えたダブルベッドが二台も乗っ取る寝室。
ベッドボードに枕を三個重ねて上半身をもたれかけ、ぐでーっとするオレ。聴覚もぐでーっと理宇の不穏な発言を聞き流す。
オレの左腿を枕に、投げ出したオレの両脚の間に納まる理宇。片手でスマホを弄って委員会業務しながら、もう片方でオレのオレを弄ぶ。オレのオレも、オレ同様にぐでーっと使い物にならず、横たわる。
こんな書き出しで申し訳ない。
「りうー、ベタベタするぅーシャワーしたいぃー足腰立たないぃー」
「まだ、だーめ」
理宇はマメなスーパーダーリンを素で体現してるくせに、それを上回る効率厨だ。
「もっと抱きたい。お風呂は後でね」
「もう無理。オレは明日バスケ部の朝練に出たい」
愛する彼氏のお願いを受けたいところではあるが、思春期男子高生であろうと連続四回戦目はキツい。
「宗壱、体力無さ過ぎ」
「だから、そこは朝練出席して鍛えて、だなー」
体育祭の準備自体は、運動部員で構成される審判団と実行委員の仕事。でも、卒業生関連は生徒会の分担。学園を三色に組分けして戦うんだけど、組色指定でOBが多額の差し入れをくれたりするんだよね。
体育祭前なのに、生徒会書記のオレはほとんど運動できない理不尽スケジュールになってる。
「そろそろ休憩終わっていい? 我慢できない」
スマホを投げて仕事を放棄。頭が左腿をすり上がる。理宇の両手と唇が、ぐでオレに迫る。
「なあ、ノゾキって何?」
「そーいち、興味ある?」
四回戦の火蓋をギリギリで守れたみたいだ。
スマホを軽く操作して、オレに動画を見せてくる。五分弱で音声は無い。制服の男子二人が……ヤッてる?
顔も局部も映ってはいない。はだけた白いシャツ、膝まで下げた制服のスラックス。チラチラ見える肌色、ねっとりと突き上げる腰の動き。
ベッドサイドからカメラを固定してるのかな。体が大きめの受け君の背後から、背の小さめの攻め君が覆いかぶさる。首から下、全体が入るアングル。
「これ……うちの標準制服? 理宇、今何の業務してるの?」
「んー、広報委員会じゃなくて、風紀の判定を頼まれた。これ、本気で繋がってると思う? ヤッてるフリ?」
理宇の属する広報委員の業務は、学園公式アカウントの運営の他に、細かい、例えば軽音楽部の各バンドごとのアカウントなんかの指導監視が含まれる。
風紀委員会は、公立だったら警察や憲兵をイメージするかもしれない。でもうちの学園の風紀は、サイバー犯罪対策室だ。生徒個人の各種SNSアカウントを、表から裏まで見張っている。ぐーぐる先生に怒られそうな、ヤバめのシステムを組んでいるという噂。
「今の風紀のメンツ、恋愛関連の揉め事に弱いんだよね、特に同性」
暴力の形で揉めるのは、体育祭当日。あとは、体育祭の組色分けための『中一スカウト鬼ごっこ』の時ぐらいだ。この二つはガチムチの運動部系審判団が対処するから、風紀委員の出番はない。
学園で単発的に発生するイジメは、力じゃなくて高偏差値の頭脳を使って追い込むタイプが多い。だから、その対策に特化してきた風紀委員会なんだけど……なるほど、恋愛、ね。
シーンが切り替わる。揺れる画面。上がカメラを持って、正常位で組伏せた下を撮影してるみたいだ。画像ブレに緩急がついていて、うーん、本物かフリだけか、オレには判定できん。
攻め君の片手が、受け君の乳首に伸びる。しっかり厚い胸筋を制服から出して、揉むように撫で回す。激しく揺れた際に画角に入る腹筋が、小さい手の動きに合わせて、ピクピク痙攣してるのが見て取れる。
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