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第4話 火食鳥のシチュー
1ー4 火食鳥のシチュー
「貴様!皇太子に対して、無礼な!」
美少年の背後に控えていた淡い金髪の男が叫んで、腰の剣を抜こうとした。
「やめろ!ケイラス!」
「しかし」
「かまわん」
美少年の一言で男は、後ろに下がった。
あれ?
俺は、この2人を見比べてはっと気づいた。
なんか、この2人、似てる?
雰囲気が。
というか、顔立ちもどことなく似ている。
兄弟かなんかか?
考えていた 俺に向かってにこっと微笑むとその美少年は、立ち上がった。
「仕方があるまい。聖母殿は、まだ、この世界に召喚されて間もないのだ。食事でもとられて、少し、休まれた後で、もう一度、ご挨拶に来るとしよう」
そう言って、美少年は、もう1人の金髪の男を連れて部屋から出ていった。
後に残されたのは、さっきの銀髪の若い男と数人の白いローブの男たちだけだった。
なんだか気まずい沈黙が流れる。
それは、俺だけではなく、他の連中にとっても同じようだった。
そのとき、俺の腹がぐうっと鳴った。
俺は、かぁっと顔が熱くなるのを感じていた。
「何か、食事をお持ちするように」
銀髪の男が命じると、フードの男が1人、部屋から出ていった。
「しばらくお待ちを。聖母様」
「それ」
俺は、銀髪の男に訊ねた。
「それ、いったい、なんの冗談なんだよ?」
「冗談ではありません」
銀髪の男が言ったとき、 フードの男が戻ってきた。男は、手に湯気のたついい香りのするスープの入った皿ののった盆を捧げ持っている。
「どうぞ、暖かい火食鳥の肉のシチューでございます」
ヒクイドリ?
俺は、小首を傾げた。
新しい鶏の品種かなにか?
俺は、朝飯前で腹が減っていたことを思い出して、遠慮せずにシチューの皿へと手を伸ばした。
シチューは、暖かくって美味しかった。
うん。
確かに、美味しい。
けど、なんか、足りない感じがする。
だが、空腹には、勝てなかった。
俺は、シチューを平らげると満足して、あくびをした。
なんだろう。
俺は、もう一度、あくびをした。
すごく、眠い。
俺は、そのまま、ソファにもたれて眠りに落ちていった。
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